コンパクトフィルムカメラ【Ricoh R1s】のレンズをミラーレス一眼用に改造してみました。
“GR”の源流となった名機リコーR1
【RICOH R1s】は1995年に発売されたコンパクトフィルムカメラ。先の「R1」から基本スペックはそのままレンズに小改良が施されたマイナーチェンジ機。
その特徴は何と言っても圧倒的なボディの薄さ。上リンク先のリコーHPでも「ワイシャツのポケットに入る薄いボディ」と紹介されている。
この機種が好評を博し、プロをも納得させる高性能機として誕生したのが “最強のスナップシューター” こと「RICOH GR」その哲学はデジタル化した今となっても全くブレない。
さて、このR1sは改造目的で入手した訳ではなく数年前にフィルムカメラが妙に欲しくなった時期があり、その時ジャンク品で手に入れたもの。メチャ安かった。
ジャンク品と言いつつも撮影自体は可能。しかし上面液晶は写らず、ファインダー内のブライトフレームも消えてしまっている。これらは発売から20年以上経ったR1、R1sでよく見られる持病とも言える症状だ。
そこまでは良かったがフィルム一本試し撮りした後、しばらくしたら電源が入らなくなってしまった…
これもたまにあるレンズ沈胴機構のギヤの固着か?と思ってネットを参考にメンテしたが復活せず。と言うかレンズ駆動のモーター自体が死んでるっぽい。
うむ。こうなってしまったらもはや私には何の価値もないカメラ。
そこで搭載レンズ「RICOH LENS 30mm F3.5 MC Macro」を摘出してミラーレス用交換レンズとして再活用と言う訳です。
ちょっとその前に試し撮りした時のフィルムをデジタルスキャンしてみました。今後公開する機会もなさそうなので。
Ricoh R1s フィルム撮影
使用フィルムは「FUJIFILM SUPERIA X-TRA 400」
フィルムのデジタル化はデジタル一眼と「 Nikon スライドコピーアダプター ES-1」を使った簡易的な方法です。その後ネガポジ反転、色調、階調補正。
…ひ、光漏れ。仕上がったネガを見た瞬間それを理解した。
モルトがちょっとヘタってたのを見くびっていました。
最後の道頓堀は曇り空だったので影響はごく軽微のようですね。私はデジタルからカメラを始めたので新鮮な体験ではありますが。
光漏れの位置的には裏蓋のフィルム確認窓かな?外からパーマセルテープでも貼っとけば防げたかもしれませんね。
それにネガをよく見るとコマの間隔も微妙に不均等だ。いろいろとガタが来ていたのかも知れない。
いよいよレンズ改造
レンズを取り出した状態。ネジを数本外してアルミ外装を外すと内部はほとんどエンプラ製。構造の合理化と共に徹底的な軽量化も図られている。
肝心のレンズについては、R1s搭載のレンズは30mm F3.5の他に「24mm F8 ワイドパノラマ」モードがある。
背面レバーを切り替えると、内蔵のワイドコンバーターレンズと共にパノラマ撮影用のマスクが画面上下に降りてくる。このパノラママスクを使わず24mm×36mmのフル画角で撮影する改造は非常に簡単で有名ですね。
レンズ構成は4群4枚から6群6枚になりF8相当の固定絞りになる。
今回はこの24mmF8に固定して改造します。
ワイド24mmは改造したフル画角で使うと、強烈な周辺減光と周辺が流れるとフィルム時代から言われてきた。本来は上下にマスクがかかりトリミングされる範囲ですからね。まぁボーナス機能みたいなものなんで画質は重視されていないと思います。
それをテレセン性がシビアなデジタルで使う訳ですから後は推して知るべし。
とは言っても30mmもデジタルで試写した所、周辺の流れがあった。絞りも操作できないのでこれは面白味に欠けます。ならば個性の強い24mmの方が改造レンズとしての魅力的で固定絞りなのもむしろ好都合です。
R1sはAFカメラでピントリングがないのでヘリコイドアダプターを使ってピント合わせを行う方法を採ります。
いきなりですが、これが完成形。アダプターは「コシナ V-ME クローズフォーカスアダプター」を使用。
実は上の分解写真から改造に行き詰り半年以上放置していた。思い出した頃にあれこれ試してみると、ベストな改造案が見つかり一気に完成まで進みました。
ネット検索するとR1、R1sの改造レンズはいくつか見つかるが、その多くがプラ製のボディキャップに穴開け加工して中心にレンズをハメ込む方法。
確かに最も安く手っ取り早い方法かも知れないが、ボディキャップの中心に正確な穴を開けるなんて私の技術では到底不可能。既存の金属部品を組み合わせて可能な限り精度を確保する方法を私は重視している。
またプラマウントになってしまうのは避けたいと言うのもあります。
サイドから見るとこんな感じ。パーツ順は右側から
・34mm保護フィルター
・引き伸ばしレンズ鏡胴
・L39⇒ライカM変換アダプター
・R1sレンズユニット
キーパーツとなったのは「引き伸ばしレンズ」の鏡胴。レンズは確か「FUJINON-ES 90mm F4.5」だったと思います。これが無ければ改造は諦めていたでしょうね。
引き伸ばしレンズはL39マウントなのでライカM変換アダプターを付ければ、精度も確保できる。多少の加工は必要で前に伸びていた鏡筒を切断、マウント基部のみを使用した。
そして何より驚いたのがR1sのレンズユニットが全くガタ付きなく、引き伸ばしレンズの内径にジャストフィット。調整する隙間すらないので光軸合わせは一切行わず接着のみで仕上げた。
後玉や周辺の部品はEマウント面からほんの少し飛び出す。コンパクトカメラらしいバックフォーカスを詰めた設計のレンズです。
プリッと飛び出た後玉はプラスチックモールドの非球面レンズっぽいね。ガラスよりキズ付きやすいかも。
α7系では装着に関して内部干渉はなく、メカシャッターも問題なく切れる。
24mm F8で改造したのでワイコンレンズと共に固定絞りが見えます。
R1sは自動開閉のレンズバリアで前玉を保護しているのでフィルター溝はない。
これも運よく「30.5⇒34mm」のステップアップリングが引き伸ばしレンズの鏡胴内にジャストフィット。これで保護フィルターとレンズキャップが装着可能になった。
ライカM変換アダプターは接着していないので他のレンズと共有可能。
重量は全体で「約163g」ヘリコイドアダプターが重くて単体で125gもある。
オリジナルのR1sは145g(電池別)なんですよ笑
α7IIIへ装着するとこんな感じ。意外とイイ面構えで悪くないです。
そして特筆すべきはこの驚異的な薄さ。ボディキャップ代わりにもなりそうで改造レンズとなってもR1sの特色はまだ生きている。
最短撮影距離は「約23cm」で結構寄れる。ちなみにAFアダプター「LM-EA7」には部品の干渉があり装着できませんでした。
さて、このレンズの特徴を挙げると
広角・F8固定・飛び出た後玉・強烈な周辺減光・デジタル使用での周辺の流れ…どうしても「Carl Zeiss Hologon/ホロゴン」を連想する共通点の多さ。
いや、ホントはレンズ構成も設計思想もまるで違うので比べるのも恐れ多いが、やっぱりソレっぽいよなぁ~と。Hologon使ったことないけど。
そこで、この改造レンズを自虐と憧れを込めて“チープ・ホロゴン”と密かに名付けることにした笑
以上、RICOH R1sの改造レンズレビューでした。
【改造レンズ】α7III×RICOH R1s 24mm F8 実写レビュー
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