「Leica SIMMICRON-R 50mm F2」と「XR RIKENON 50mm F2」の実写比較レビュー
“和製ズミクロン”が本家ライカに挑む!
一度は手にしてみたいライカの王道標準レンズ “ズミクロン”
タイミングよく「SUMMICRON-R 50mm F2 TypeII」を入手出来たものの、ツァイス プラナーを愛用していたため思ったより使用頻度が少ない…
考えた末に手放すことにしたが、最後に撮りたいと思っていたのが “和製ズミクロン” の異名を持つ「Ricoh XR RIKENON 50mm F2」との撮り比べ。
1978年に定価39,800円、サンキュッパのフレーズでヒットした一眼レフ「Ricoh XR500」の標準レンズで安くてナンボ、何の変哲もないレンズのはずが、
当時のカメラ誌(アサヒカメラ?)の性能評価で「ズミクロン50mmに匹敵する中央解像度」と評されたことが始まりだったはず。
しかしズミクロン並と言っても、一体どのズミクロンやねん。M型?R型? M型っぽいが「空気レンズ」で有名な第一世代か?その後のレンズなのか分かりません。まぁとにかく、高価なズミクロンを何本も所有している訳もないので今回は
◆Leica SUMMICRON-R 50mm F2 TypeII
◆RICOH XR RIKENON 50mm F2 初期型
の2本を比較。光学系は共に美品のコンディション。レンズ構成は「4群6枚」と「5群6枚」で定番のダブルガウス構成。一眼レフ用のレンズ同士なのでフェアではある。
巷で“和製ズミクロン”と認められているのは 初期型(前期型) で
その後はコストカット目的のモデルチェンジが幾度もされる。レンズ構成の大きな変更はないが、鏡胴はプラスチック主体、最短撮影距離が0.6mとなりスペックダウン。レンズ名は「L」「S」「P」が加えられ「XRなし」など複数存在する。
初期型の判別ポイントはレンズ名のほか、
・金属鏡胴
・最短撮影距離 0.45m
・絞りリングに50mmの刻印
などが目印となる。
注目すべきは「初期型」とその次に出た「L」が富岡光学製であると言うこと。出ましたね~トミオカの名が。これだけで何となく納得してしまう笑
一番人気の初期型でも特に価格高騰もなく流通数はまだまだあるので、せっかく手に入れるなら初期型を強くオススメします。目利きすれば3,000円以内で美品も狙える。
遠景
ボディ:SONY α7III
Adobe LightroomでRAW現像。各項目は同パラメーター調整。レンズ補正なし。
カメラは三脚で固定し同位置から撮影
画像ギャラリーはクリックで拡大後、左右キーや矢印アイコンで画像の切替え可能です。※PC向けの構成なのでスマホなどでは表示が崩れる可能性あり。
まず両者を比較してすぐに気付くことは「ズミクロンの方が微妙に画角が狭い」こと。
最初は歪曲収差の違いかと思ったが、メーカー仕様表を見るとこのレンズの実焦点距離は「52.5mm」となっていた。製品規格の許容内に収まっていれば、公称値/製品名は50mmで全く問題ないそうで。ふ~ん
ライカから始まった35mm判の標準50mmは「実焦点距離 51.6mm」が業界の慣例となっているらしいが、全ての50mmがそうではない訳で、このレンズも少し長めのようだ。リケノンの方は何ミリか不明ですが。ちなみにヤシコンプラナー50mm F1.4は「51.8mm」です。
周辺減光はF5.6で両者ほぼ解消される。全景画像をズラズラ並べても細部は分からないので、以下で赤枠内の中央と周辺の2ヶ所を拡大比較。
中央部
開放ではズミクロンの方が少し球面収差が目立つ。1段絞れば両者甘さが消え、絞るほどに解像度は増す。F8辺りがピークでF11以降は回折現象により解像が落ちる。
両者とも標準単焦点として満足の性能だが、開放はリケノンがわずかに優れている。む、これが和製ズミクロンたる所以か。
周辺部
周辺部の最も差が顕著だった場所を拡大してみたが、この結果には驚いた。ズミクロンの圧勝です。
ズミクロンは開放からなかなかの描写。リケノンはダラダラと収差が残りF5.6でやっと同等レベル。ピークはF8でF11付近で両者回折現象が出る。
ズミクロンはライカが良く言う「画面の平坦性」を重視したのに対し、大衆カメラであるリケノンはコストに限界のある中で中央部の性能に振り切った設計にも見える(あくまでこの個体においては)
逆光耐性
左列がズミクロン、右列がリケノン
直接太陽を入れるのでなく、建物の反射光をフレームインさせて逆光耐性のテストした。悪影響の懸念があるレンズフィルターはもちろんナシです。
両者モノコートレンズでゴーストの色やフレアの広がり方に結構な差が出た。
オールドレンズにはかなり厳しい状況なので絞ってもフレア、ゴーストが完全解消することはなかったが、ズミクロンの方が多少コントラストが高く見える(特にF5.6が良い) ズミクロン50mmは階調の良さが語られるが、こう言うことか。
F11に絞るとリケノンの方にだけ巨大なゴーストが出現したのも大きな差。
逆光耐性はレンズ構成、コーティング性能、鏡胴の内面反射処理など様々な要因があるだろうけどマウントアダプターの品質差の影響も捨てきれない(ズミクロンは日本製Rayqual、リケノンは中国製)
まぁレンズの角度を調整すれば幾分かは軽減出来るし、オールドレンズを愛する人ならこれらを演出として活用してみたいよね。
また以下の気になる点も
一部を拡大。葉っぱの縁を見るとズミクロンの方はフリンジが発生しやすいようだ。しかし一段絞るだけで解消したので大きな欠点にはならないかな。
ちなみにズミクロンR50mmF2のTypeIIには内蔵式フードがあるが、これと言った遮光効果は得られず撮影結果は一緒でした。
近接撮影
ここからは室内撮影での比較
撮影距離はズミクロンの最短に合わせて約50cm
安定した室内光源で、撮ってる時はイイかもと思っていたが正直言ってあまり参考にならない比較かも。ブリキの配置にセンスがなさ過ぎた。2本の比較よりもレンズ単体の絞り変化を見て欲しい。
一応両者を比較した印象は、中央のピント部は開放でリケノンの方がシャープで遠景の時と同じ。またズミクロンの方が被写界深度がわずかに浅く感じた。
開放の後ボケに特段大きな違いはなさそう。共に硬めのボケ味だ。
玉ボケ
LEDライトを背景に玉ボケを撮影
同位置からの撮影ではズミクロンの方が玉ボケがわずかに大きく、口径食も抑えめ。
絞り羽根は互いに「6枚」であるがズミクロンは角が緩く、リケノンは角張っている。大方ズミクロンの方が好ましいが、リケノンF2.8の時の六角ナットみたいな玉ボケもブリキロボのような被写体にはマッチする。
玉ボケを拡大してみるとリケノンの方はザラつきが見える。レンズ貼り合わせ面の模様だろうか?
これに関しては製造コストがモロに影響している思う。流石にあのライカですからレンズ硝材や貼り合わせ面のバルサムなどの品質が最高級であることは間違いなさそうだ。
まとめ
今回試した個体に限り、と言う点を強調した上で
ズミクロンの方が多くの面で優れているが、リケノンも価格以上の高パフォーマンスを見せた。和製ズミクロンの異名に異論はない。
ほとんどの場合で開放の中央部はリケノンの方がシャープで、パッと簡単に撮った時の印象はかなりイイ。
反面ズミクロンは使い込むほど設計レベルの高さが分かってくる感じですかね。
レンズ鏡胴の作りは言うまでもなくズミクロンが圧倒的に良い。オールドレンズの評価は外観、操作性も重要なファクターですからね。
個人的にはこの2本を比較する価値はあったと思っております。以上、本家VS和製ズミクロン対決レビューでした。
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