2種類の【ASAHI PENTAX TAKUMAR 35mm】を比較
高級版&廉価版のタクマー35mmを比べてみる
今回はM42タクマーの比較をしてみました。
◆SMC TAKUMAR 35mm F2
◆SMC TAKUMAR 35mm F3.5
両方とも最後期の「Super-Multi-Coated」シリーズで俗に言うSMCタクマーです。
35mm F3.5はタクマー55mm F1.8、28mm F3.5と並んで玉数が多く格安入門オールドレンズとしてポピュラーな存在。
対する35mm F2は大口径の上位レンズで相場はやや上がるが特に人気と言う訳でもなさそうだ。
入手は単品買いではなく複数のジャンクカメラの中に入っていたもの。F3.5なんかもう何本目だと言うくらいよく集まる。今回の2本は最も状態が良く手元に残しておいた個体です。
35mm F2 | 35mm F3.5 | |
マウント | M42 | M42 |
絞り枚数 | 6枚 | 5枚 |
最短撮影距離 | 0.4m | 0.45m |
フィルター径 | 49mm | 49mm |
全長×最大径 | 54×58mm | 34×47mm |
重量 | 242g | 152g |
発売 | 1971年 | 1971年 |
発売時価格 | ¥27,100 | ¥15,800 |
レンズ構成は共にレトロフォーカスタイプですが設計の世代間を感じる。
F3.5は半自動絞りのオートタクマー時代から基本設計が変わらず、テッサー型のベースと前玉の凹メニスカスレンズが大きく離れた如何にも初期のレトロフォーカスと言った感じ。
F2は歴代大口径モデルのF2.3やF2前期型(ファットタクマー)で設計ノウハウを得たのか小慣れた構成に見える。
ただ光学の一部にトリウムレンズが使用されており経年による黄変が発生することは有名。あまり人気がないのもこれが原因じゃないでしょうかね。
同じ構成でSMCより前のSuper-Takumar版も持っていたが、これより黄変が強く淀んだ写りがイマイチで直ぐに手放した。
それと比べるとこの個体はまだマシな方に見える。実写ではF3.5とのカラーバランス比較も行っています。
F3.5の方はタクマーの常用域レンズの中で最も軽量コンパクトに作られており軽快なスナップ撮影に最適。
F2は全長が長く中望遠並のサイズだがファットタクマーと呼ばれる前期型から大幅にスリム化している。
それぞれの最短撮影距離は広角レンズとしては長めの「0.4m」と「0.45m」で接写には向かない。とは言え時代的には他メーカーもこんなものです。
SONY α7IIIに装着 両方とも手頃サイズの鏡胴なのでミラーレスとのバランスは良好。
実写比較
ボディ:SONY α7III / 三脚使用 / フィルター・フードなし
Adobe LightroomでRAW現像 WB以外は同パラメーター処理
はじめにF2のトリウムレンズによる黄変の影響を確認。下の画像はRAW現像時に同じ色温度で揃えたもの。
F3.5はニュートラルなカラーバランスで良好。対してF2はかなり黄色いですね。
RAW現像の後処理でも色調を近付けることは可能だが、この2本の色調を完全に揃えるのは難しい。
またY2イエローフィルター装着時と同じように多少の減光効果が出ているようだ。この場合だと0.3~0.7段ほど露出差があった。
そして同じ焦点距離35mmでも明らかに画角が違いますね。
後でEマウント用の「ZEISS Loxia 35mm F2」を基準として比べた所、F3.5が少し広く写っている結果でした。
次に中央部と周辺部を拡大、WBは可能な限り近付けています。
中央部
以下左側がF2、右側がF3.5です。
比較はF値が揃うF3.5からになりますが、
F2の方は絞りリングのF2.8とF4の中間クリックとなるので「F3.5相当」と見てくれればと思います。
35mm F2 / 35mm F3.5
2本とも開放は甘さがありますが一段でも絞れば改善する。
解像ピークはF8~F11、F16で回折現象により画質は低下する。
両方ともオールド単焦点の模範的な描写ですね。続いて周辺部。
周辺部
35mm F2 / 35mm F3.5
両方とも開放では像が流れ気味。絞り込むにつれ像が明確になってくる。
F5.6までは上位のF2が有利に見えるがそれ以降はF3.5が逆転する。
そしてF2には倍率色収差も出ている。デジタルセンサーとの相性によるものかも知れないが、目障りならライトルームのフリンジ除去でキレイに補正出来ます。
上位レンズであるF2は像面湾曲があるのか周辺の性能ピークが意外と低く(片ボケではないことを確認済み)絞り込んでパンフォーカス撮影するのなら廉価なF3.5の方が良好な画質が得られるだろう。
近接撮影・ボケ
2本とも最短撮影距離で撮影。
開放値と最短撮影距離5cmの差は大きくボケを強調した撮影は最短0.4mのF2が断然有利。
F3.5は特にボケ味を楽しむようなレンズではないかも知れませんね。
まあ今はミラーレス用のヘリコイドアダプターを使えば最短距離の短縮も可能なので表現の幅を広げることは可能だ。
逆光撮影
レンズ構成の違いからかフレア・ゴーストの出る場所が違いますね。
F3.5は光源周囲に虹色のシャワー状ゴーストが出現。
絞り込んだ時の光芒はF2の方がハッキリとしている。
総じてF2の方が逆光耐性は良好ですが、共にマルチコート仕様なだけあってオールドレンズとしては優秀です。フレア・ゴーストを楽しむのならモノコートのSuper-Takumarなどが期待できる。
まとめ
まあ正直に言えば比較するほどのレンズだったのか分かりませんが、
光学性能・鏡胴サイズ・価格など総合的には35mm F3.5の方が楽しめるレンズだと思います。
あまり多く流通していないF2は正直言って今いちパンチに欠ける印象で評価しづらい。
黄変している当該レンズを取り出してUVライトを長時間照射すれば多少は透明化するようだがそこまでするのなら、
トリウムレンズのない前期型ファットタイプの方が満足感が高いと思う。
まあメーカーを選ばずM42で35mmをチョイスするなら「Zeiss Jena Flektogon 35mm F2.4」持っていれば他は要らないかも…とは思いますね。
以上、SMC TAKUMAR35mmの比較レビューでした。
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