6本の標準オールドレンズで玉ボケの比較とバブルボケの可能性をテストしてみました。
6本の標準レンズを比較
今回比較検証するレンズは6本の標準単焦点。
前回から売って買ったりで何本か入れ替わりました。こんな調子だから一向に減らないんだよ笑
前回の比較記事は以下リンク
【8本比較】魅惑の玉ボケ ~標準レンズ編~
左から、おなじみ「CONTAX PlanarT* 50mm F1.4」は標準オールドレンズとして完成度が高いので比較基準として最適。
「Meyer-Optik Oreston 50mm F1.8 (M42)」は東独製でクセのあるボケ味が特徴。また最短撮影距離が33cmと接写に優れるのも魅力。
「Canon FL 50mm F1.4 I」は前回プラナーとの違いを確認したが今回も比較してみよう。
続いて、この3本は全てジャンク品で入手したレンズ。そのままでは使える状態ではなかったのでメンテを行った。
「FUJINON 55mm F2.2」はバブルボケが出るレンズとして既に認知されていますね。
問題は市場にある大半の個体に鏡胴の経年劣化があること。鏡胴はプラ素材が多用されており特にピントリングのヒビ割れが顕著。この個体はゴムを外したらボロボロと崩れた(泣) なんとか修復したが今後の取り扱いに注意。
「PETRI 55mm F1.7」は色気のないデザインがイマイチだったのでリメイクしてみました。表面を研磨してシルバーを出してロシアレンズ風の無骨な外観に仕上げてみた。
「MINOLTA ROKKOR-PF 58mm F1.4」も長年放置された状態で汚れが酷かったが、分解清掃や文字のレタッチなどをすると見違えるほど小奇麗になった。
玉ボケ比較テスト
使用する点光源は家庭用イルミネーションライト
使用ボディはSONY α7III 画像は全て開放絞り。同パラメーターでRAW現像。
カメラは三脚固定で同位置からの撮影ですが玉ボケの形重視によりピントリングの距離は揃えていません。またレンズによっては接写リングやヘリコイドアダプターを使用。
念の為、画像は前ボケではなく全て背景となる後ボケです。
CONTAX Planar T*50mm F1.4 MMJ 6群7枚
今回の比較基準として役割のプラナー。玉ボケにクセの強さは感じられず、口径食もオールドレンズとして模範的な描写です。
Canon FL 50mm F1.4 I 5群6枚
玉ボケの大きさや形はプラナーと同等だが、やはり輪郭、エッジが多少強く出るようだ。
左:Planar 50mm F1.4 / 右:FL 50mm F1.4
FL 50mm F1.4 I は通常撮影では二線ボケも目立つので一般的にはボケのうるさいレンズとなるが、オールドレンズが定着した今でこそ光る個性と言える。
Meyer-Optik Oreston 50mm F1.8 4群6枚
おぉ!これはスゴイ。先の2本とは次元が違いますね。口径食が目立つのでバブルボケには届かないがかなりクッキリしています。国産の4群6枚の50mmではこんな玉ボケありえません。
先のFL50mmも含め、このようなエッジの強い玉ボケが出るレンズを過剰補正型と呼ぶようで(プラナー50mmは完全補正型)さすがTrioplanで有名なMeyer-Optikだけあって程度が突き抜けている(設計に無理をしているからと言うのが実情だが)
ただ、一つ気になる点として
中央部を拡大すると玉ボケが真円ではなく、フニャっとしていますね。
これはM42マウントレンズ特有の「絞り連動ピン」が原因です。
通常はレリーズの瞬間に押し込まれる絞りピンがマウントアダプター装着時には常時ピンを押し込まれることで、レンズによっては絞りが適切に連動しない場合がある。特に東独やロシア製。
このOreston 50mmの場合は開放でもわずかに絞り羽根が出てしまうので玉ボケに変形が見られる。
今回使用したアダプターは日本製Rayqualで国産M42レンズでは全く不具合はない。アダプターメーカーによって押し込み量が微妙に違うらしいがどうなんだろうか。
最も確実なのは「ピン押しなし」タイプのアダプターを使いレンズに備えられた絞り込みプレビューボタンを押しながらシャッターを切る方法だろう。
FUJINON 55mm F2.2 4群4枚
焦点距離が55mmとなり画面全体に玉ボケが広がる。画面隅はわずかに歪むが口径食は少なく均一。
難点は最短撮影距離が「60cm」と長いこと。この条件では小粒の玉ボケしか出せないのでヘリコイドアダプターを使用した。
さて、全体画像でも玉ボケに異変を感じるかもしれませんが拡大すると…
うげぇ…玉ボケにじんましん!いや顕微鏡で見た細菌?
…例えはどうでもいい。これはヒドい玉ボケですね。
正体はレンズ最後部のカビ跡なんです。清掃はしたもののガラス内まで侵食されてご覧の有様。また薄クモリもありコントラストの低下も見られる。
ここまで酷い状態だと潰す覚悟で一か八か、コーティングを研磨するしかありません。まぁそれよりも状態の良い個体を探した方が早いし、個人的には買い集めるほど魅力を感じないのでもうこれでイイっす。
Petri C.C AUTO 55mm F1.7 4群6枚
FUJINON55mmと比べてわずかに口径食はあるものの、バランスの良い玉ボケ。拡大してみると
ペトリィ~お前もか。レンズに除去しきれないカビが残っています。
標準レンズとしてボディとセット販売されていたFUJINON55mmやPetri55mmは現在、高確率で後玉にダメージがあります。
特に一眼レフに装着されたままでジャンク品扱いの物は確実と言ってもいい。私が入手したFUJINONはボディのミラーボックスごとカビてましたから笑
当時はトップメーカーと品質や性能で太刀打ち出来る訳もなく低価格であることを売りにしていたメーカーたちですから、購入するユーザー層もカメラを丁寧に保管する割合は少なかったはずです。
その結果、長年放置されたものが実家から出てきて云々、市場に流れてくる…と言う感じでしょうか。元々このレンズはコーティングの耐久性が低いとも言われていますがね。
MINOLTA ROKKOR-PF 58mm F1.4 5群6枚
Petri55mmからほんの少し画角が狭くなった程度でそんなに違いはないかな?
拡大して見ると、何コレ?カビ跡ではなさそうですが。
どうやら貼り合わせレンズの縁にバルサム切れ(貼り合わせレンズの剥離)が発生していたようです。
通常撮影での影響は無視して良い程度ですが、う~ん。玉ボケと言うヤツはレンズの状態を包み隠さず明らかにしてしまうようですね。
ここで前回と違い、今回はもう少し踏み込んで作例らしいものを用意しました。
玉ボケ作例
カメラと被写体のブリキロボとの距離は約60cm。
カメラ、背景、ピントも全て同じ位置から撮影しました。もちろん全て開放絞り。
CONTAX Planar T*50mm F1.4 MMJ
我らがプラナー。何の不満もない。もうコレ一本でよくない?と思ってしまいそうですが、最後までやりますよ。ええ。
Canon FL 50mm F1.4 I
先のプラナーとの比較と同様の結果。玉ボケのエッジが強くなる他、若干口径食に差も見られる。
Meyer-Optik Oreston 50mm F1.8
ここでF値による明確な差が出ました。玉ボケの明瞭さは健在ですが、大きさはF1.4のレンズと比べてずいぶん小粒ですね。
同位置からの撮影ではハンデがあるが、このレンズの本領は33cmまで寄れる接写性能。それを積極的に活かすべきだろうね。
FUJINON 55mm F2.2
55mmだと中望遠っぽい雰囲気になりますね。やはり周辺まで口径食の少ない玉ボケが出るようです。大きさもF2.2と最も暗いレンズだが意外と健闘している。
問題だったカビ跡も実践的な撮影では思ったほど目立たないかも?
Petri C.C AUTO 55mm F1.7
こちらも口径食が比較的穏やかで使いやすそう。
F値なども含め総合的にはFUJINON55mmよりこちらの方が好み。
MINOLTA ROKKOR-PF 58mm F1.4
58mm F1.4で最もボケ量の大きいレンズ。画面から溢れそうな玉ボケだ。
大きさ、形もなかなか良くバルサム切れの模様もあまり気にならない。ぶっちゃけ数合わせで用意したレンズだが思いのほか好印象だ。
まとめ
えー、玉ボケばかり見過ぎてちょっと胸焼けしそうですが笑
今回、6本の中でバブルボケが望めるレンズはこの3本
◆Meyer-Optik Oreston 50mm F1.8
◆FUJINON 55mm F2.2
◆Petri C.C AUTO 55mm F1.7
みんな廉価レンズです。要するにバブルボケは設計の未熟さから残る収差の副産物なので高性能レンズほど出ないと言う訳ですね。
ただOreston 50mmについては撮り方次第でバブルボケに近くなるか?と言った感じ。Meyer-OptikではTrioplanやDomiplanがバブルボケの鉄板。
後はやっぱりレンズコンディション。カビやバルサム切れは玉ボケにモロに影響します。
使用ボディについても口径食が目立つフルサイズよりはAPS-C・マイクロフォーサーズで真ん中の形の良い部分をピックアップしてやればいいと思う。
フルサイズで撮りたい場合はクロップかトリミング前提。後はRAW現像で遠慮なくレタッチしましょう笑 加工ありきの特殊撮影とでも思った方が望むバブルボケが撮れるはずです。
以上、標準オールドレンズの玉ボケ比較でした。
中望遠レンズの玉ボケ比較は以下
【12本比較】終・魅惑の玉ボケ ~中望遠レンズ編~
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