フィルムレンジファインダーカメラ【ZEISS IKON ZM】のレビュー
コシナ×ツァイスが復活させた新生レンジファインダーカメラ
今回レビューするのは【Zeiss Ikon ZM】
私が持つフィルムカメラでは一番大きな買い物となりました。
2005年にコシナと独カール・ツァイスの共同開発によって生み出されたライカMマウント互換のレンジファインダーカメラ。ツァイスイコンブランドの新製品は実に30年ぶりだった。
時代はフィルム終末期でデジイチ全盛目前。同年にCanonからアマチュア向けフルサイズの初代EOS5Dが発売。
さらに京セラ/コンタックスの終了、翌年にはコニカミノルタがソニーへのカメラ事業譲渡など変革期と言える大きなニュースが続く中でフィルムカメラの意義を今一度問うかのように登場したのがZeiss Ikon ZMだ。
カタログには「写欲。」「好敵手。」などのキャッチコピーが添えられ同時発表のZeiss ZMレンズと共に愛好家たちのフィルム熱を大いに刺激した。
全体スペックなどはコシナの製品ページを参考にして貰い、個人的に注目の特徴を挙げてみる。
・絞り優先AE可能
・Mマウントで最大の基線長を誇る距離計
・ブライトフレームは28mmまで対応の0.74倍ファインダー
・現在でもコシナのアフターサポートが受けられる
まずZeiss Ikon ZMは電子シャッター機であり、この点で評価が分かれるだろう。個人的に機械シャッター信仰はないので、構図に集中出来る絞り優先AEはありがたい。
光学面ではMマウントボディにおいて究極性能を目指したファインダーが圧倒的で、今まで経験してきたレンジファインダーとは全く別次元。
そして何より現在でもコシナで正規サポートを受けられる点が魅力でトータルの実用性はかなり高レベルだ。
人気の高さの割に中古流通数は少なく、ネットも実店舗も今は定価以上の相場が当たり前のようだ。この機種に限らずフィルムRFカメラは近年高騰している。
他の購入候補では「MINOLTA CLE(1981)」や「Konica HEXAR RF(1999)」があったが、やはり修理部品の払底などで整備性に欠ける。
同じコシナのBessaシリーズで距離計を搭載したR系も人気。特にR3、R4はZeiss Ikonと大して変わらない相場でコスパが悪い。R3の等倍ファインダーは一度体験してみたかったけどね。
結果として入手先はネットからで定価より少し安め、ボディカラーは希望通りのブラックにめぐり合えた。私が入手した後も相場はまだ上がっているようで、あのタイミングを逃していたら今も手元にはなかったと思いますね。
ボディは状態も良く不具合はなかったが念のため一度コシナに点検整備を依頼。費用は想像以上に安かったです。
まぁ一生モノと思って機械式のLeica M6でもと一時考えたが、修理費など調べると私には縁のないカメラだと悟りました笑
先程からチラチラ写ってるレンズはZeiss Ikonの常用レンズとして選んだ
「Carl Zeiss C Biogon T*35mm F2.8 ZM」です。あぁこれはボディを手に入れた悦びの勢いで完全に予定外の出費。
同じコシナ製のフォクトレンダーVMレンズ、例えばNOKTON35mm F1.4でも悪くはないのですが
Zeiss IkonにはZMレンズが一本欲しい、さらに対称型のビオゴンをフィルムで使ってみたい願望があったのでボディの点検整備中に入手しました。
ちなみにボディの塗装は艶のあるブラックペイントではあるが、カバーはマグネシウム合金なので真鍮ボディのような金色の地金は出ません。
コンパクトな標準レンズ「M-ROKKOR 40mm F2」も抜群に似合う。
しかしこのレンズを装着した際のブライトフレームは50mmが出る。ん~せめて35mmなら画角は掴めるのだが50mmはちょっと使い辛い感じ。
またM-ROKKOR 28mm F2.8の場合、フレームは35mm…アレ…何で??と焦ったが調べるとミノルタCLEって28mmのフレームが常時出ているんですね。だからレンズ側に28mmに対応するカムが備わっていないようです。無念。
まぁレンズのせいと言うよりボディのフレームセレクターを任意の画角でロックする機能でもあれば一番良かったんですが。
結局これらの事情もあってCビオゴン35mmを追加するに至ったのです。
純正セミハードケースを付けてみる。別売の専用アクセサリーはボディ同様に入手困難で高値が付く。
私の場合は幸運にもボディに付属した状態で手に入った。
Zeiss Ikonのボディ厚はやや薄く、構えた時に華奢な印象がありホールド性は決して高くない。
そこでボディを覆うケースがあればホールド性を向上しつつ、本体も保護出来るので安心。また不意に底面の巻き戻しボタンを押してしまうミスも防げる(フィルム装填、巻き戻し時に一旦ケースを外す手間は増えるが)
さらにケースの上から汎用のアルミ製グリップも追加してみました。見た目にちょいと後付け感はあるものの、指掛りが良くなり効果は抜群。
レリーズボタンも合わせてプレーンなボディよりも格段に使いやすくなった。
こっちは純正サイドグリップ。これも生産終了品でレア物。
後から欲しくなっても遅いので手に入る内に確保してやりました。
純正品だけあって最小限の体積で確実なグリップ力。しかしトータルの使い心地ではケース装着の方が気に入っている。
マウント部を始めボディの随所にはクラシックなマイナスネジが使われており
“ネジもデザインの一つ”と考えるコシナの強いこだわりによるものだ。これはZeiss ZMレンズも同様。
測光方式は使いやすい「中央重点平均測光」で、コロの左側にある露出計がシャッター幕の反射光を測光する。
シャッター音はレンジファインダーが一眼レフに対するアドバンテージの一つとされるだけあり非常に静かで低振動。
これでもライカMの横走り布幕シャッターの感触には及ばないらしいが、高次元の比較なので不満など出るはずもない。
RFカメラの心臓部と言えるファインダー部分。大型のアイピース部から広がる光景は非常に高コントラストかつ隅々までシャープ。
二重像は明瞭な実像式でエッジ部を使ったピント合わせも可能。視線は真っ直ぐに覗かないとケラレやすいが慣れの問題でしょう。
倍率は0.74倍で広角28mmまでフレーム対応するファインダーでは最大クラス。
実はこのファインダーは元ミノルタ技術者による設計で、当時はミノルタCLEのファインダー設計にも携わったその分野におけるエキスパートなのだ。ベッサR2以降のRFカメラや外付けファインダーなどもこの方の手による設計なのだとか。
たとえ高精度の距離計を持とうが自身の視力と合わなければ宝の持ち腐れ。純正の視度調整レンズは±3の度数まで用意されている。これは現行品で安価に入手可能。
巻き上げレバーの感触も高品質で抵抗なくスルリと動きとても静か。
つい最近レビューしたミノルタXDと甲乙付け難い操作感だ。
XDと比べこちらは分割巻き上げ可能で実に小気味良く作動する。
露出補正は1/3段刻みでZMレンズの絞り目盛と同じ仕様。これはツァイス発案の強い要望によるものだそうだ。
シャッターボタンと同軸にある電源レバーは慣れない内はオンオフを忘れたりしがち。中古品の中には電源レバーが緩くなっている個体もあるらしい。
裏蓋開放レバーは操作ミスを防ぐ二段式。
モルトが使われているのはヒンジ部とフィルム確認窓のみ。
画質に大きく関わるフィルムの平面性を高めるためガイドレールは長く設計されている。
ホットシューの真下にあるボタンはAEロックボタン。さりげない存在だが有効に使えば便利。
巻き戻しクランクは底面に配置され反対側の三脚穴と対になるようなデザイン。
電池はボタン型のLR44またはSR44を2個使用。
まとめ
“フィルムカメラは安く手に入れて楽しむもの” が信条だったが、ふとMマウントボディが欲しくなりZeiss Ikon ZMに辿り着いた。
こんな超実用的なレンジファインダーカメラ手に入れておきながら家で愛でるだけなら流石に道楽が過ぎるので積極的に使っていきたい。
まぁ実際触っているだけでも楽しいカメラなのは間違いありませんが笑
少し撮影してみて馴染みのある一眼レフと違い、やはりそれなりの慣れが必要だと感じているし、その新鮮さも楽しく飽きさせない魅力を持ったフィルムカメラですね。
以上【Zeiss Ikon ZM】のレビューでした。
【フィルム作例】ZEISS IKON ZM×C Biogon T*35mm F2.8 ZM
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