2本のCarl Zeiss 35mm F2の比較レビュー
レンズタイプの異なるツァイス35mm F2を比較
今回は以前に行った Planar50mm F1.4の実写比較 に続いて、同スペックのツァイス広角レンズを比較してみました。
◆ZEISS Loxia Biogon T*35mm F2 / 2014年
◆CONTAX Planar T*35mm F2 G / 1996年
【Biogon】と【Planar】と言う異なるレンズタイプでスペックの被るのはこの35mm F2だけじゃないかな?それぞれが持つ個性の違いはあるのだろうか。
製造国は2本ともMade in Japan
G Planar35mmは【京セラ/ヤシカ】
Loxia35mmは非公表となっているものの、ツァイスのMFレンズで実績がありEマウントも作っている国内光学メーカーと言えば…もう答え合わせみたいなもんなんですけどね。
Loxia35 | Planar35 | |
マウント | SONY E | CONTAX G |
レンズ構成 | 6群9枚 | 5群7枚 |
絞り枚数 | 10枚 | 7枚 |
最短撮影距離 | 0.3m | 0.5m |
フィルター径 | 52mm | 46mm |
全長×最大径 | 59×62mm | 31.5×56mm |
重量 | 340g | 150g |
発売年 | 2014年 | 1996年 |
発売時価格 | ¥136,300 | ¥47,000 |
定価はLoxiaがかなりお高いが現在は中古価格が半額以下にまで下がっているのでG Planarとそこまでの価格差はない。
レンズ構成は共に対称型とされるビオゴンとプラナー
Loxia35の構成は2005年に発売されたレンジファインダー用の「BiogonT*35mm F2 ZM」と類似した構成だが、ミラーレス用にリファインされデジタル使用時のパフォーマンスはフィルム用のZMとは完全に別物。
Planar35はもはや古典的な広角ガウスタイプでライカの「7枚玉ズミクロン」と呼ばれる銘玉に最も近い構成を持つ。
CONTAX GはSONY Eマウントに変換するマウントアダプターを装着。FOTODIOXの大型ピントリング付きのアダプターを使用した。
どちらもミラーレスの機動性を損なわないコンパクトさで軽快な撮影に最適だ。
撮影設定
ボディ:SONY α7III
三脚使用、フィルター+フードなし
Adobe LightroomでRAW現像 レンズ補正“切”
遠景
まずは遠景の中央部と周辺部を拡大比較
中央部
開放値がF2と単焦点として堅実であることから中心画質に問題はなく、ザッと見るだけなら開放でも実用レベル。
ピークはF8でF11以降は回折現象で解像が低下する。
全体的にはLoxiaが絞り一段分くらいリードしておりヌケも良くクリアに見えますね。
周辺部
周辺光量落ちが大きいF2~F2.8のカットはディテールを確認しやすいように明るさ補正しています。
2本とも開放は甘いが絞るほどにディテールは明確になり、両者が同等画質になるのはF5.6くらい。F8でピークとなり後は回折で解像低下。
周辺光量落ちは共にF5.6でほぼ解消される。
周辺画質はやはりと言うべきかミラーレス専用設計のLoxiaが優れていた。
とは言えPlanarも絞れば遜色の無いレベルに解像するので存外悪くない印象だ。見方によれば逆にLoxiaがオールドレンズっぽく見えてくるかも。
フィルム用のPlanarはテレセン性の影響でミラーレスだと周辺まで本来の性能が発揮出来ないと思っていたが結構相性は良いみたいですね。
歪曲収差
画像展開後はキーボード左右キーや画像内の矢印アイコンで画像の切り替え可能です。
歪曲の少なさはLoxiaが完璧に近く実質ゼロ。メーカー測定表では最大で-0.1%あるかないかでデジタル補正は不要。
かたやPlanarには樽型歪曲があり画面端で-1.5%程度もある。とは言えガウスタイプでは良く抑えられている方だと思いますし、ほぼ完璧なLoxiaと比べると粗が見えるくらいで実用で問題に感じることは少ないはず。
近接撮影・ボケ
遠景では気付かなったがこの2本のレンズは近接時の撮影倍率が大きく違うことが判明。
恐らくフォーカスブリージングの影響であり、後で他に所有する35mmとも比べてみましたが近接時は明らかにPlanarが広く写っていた。
画角が違うことから被写界深度にも差がありLoxiaの方がボケが大きいです。
Planarの方がボケが硬くザワついています。
またホワイトバランスを同じ値に揃えてますが若干色調に差も見られます。
同位置からの撮影だとLoxiaの方が被写体を大きくボケも多く出せるが、まあ単体で使う場合では特に気にならないと思います。
玉ボケ
これも見ての通りブリージングの差で被写体のブリキロボの大きさが全然違いますね。
ボケ量が違うので玉ボケのサイズにも差が現れている。2本とも円形絞りではありませんので絞れば玉ボケに角が出ます。
またLoxiaは開放でもほんのわずかに絞り羽根が出ているので特に中央部の玉ボケに絞り形状が現れることもある。
後は開放で画面周辺の玉ボケの流れ方に違いが見られるが、球面収差や非点収差などの違いによるものと思います。
軸上色収差
絞り開放付近のピント前後に発生しやすい「軸上色収差」を比較。撮影距離はPlanarの最短付近に合わせた。
これもLoxiaの方が少しボケが大きいのだが、意外に軸上色収差の少なさはPlanarの方が若干優勢に見える。
ただ、PlanarにはフォーカスシフトがありF2.8⇒F4の間でピント位置が後方にズンと移動する。撮影時のピーキングを見ていると明らかでした。
Loxiaもフォーカスシフトは皆無ではないが微調整は不要なレベルです。
フレア・ゴースト
Loxiaは開放から高コントラストでヌケが良く素晴らしいフレア耐性を発揮。
ただし、右側に写り込むゴーストが全絞り値で居座り続けるのはいただけない。また絞り込むと回折の影響かシャドウがやや浮いてきますね。
Planarはどの絞りでもフレアが多く如何にもオールドレンズと言った感じ。
Loxiaと同じ位置に形状の違うゴーストも出ているがF5.6でパッと消えるのが面白いですね。
コマ収差
画面左上端に点光源を配置して「コマ収差/サジタルコマフレア」を比較
開放では両者大きなコマ収差が発生、Loxiaの方が控えめではあるが点光源を再現するにはどちらもF5.6に絞る必要がある。
また玉ボケの時と同じく他の収差量の違いかコマ収差の広がり方に違いも見える。
まあどちらも開放から均一な画質で夜景撮影するには厳しいと言える。
光芒 / 光条
絞りをF16にして点光源に発生する「光芒/光条」を比較
Loxiaは「10枚」の偶数枚絞りで10本の光芒が伸びる。Planarは「7枚」の奇数絞りで倍の14本。
これは好みになるが個人的にはLoxiaの方が主張し過ぎないバランスの良い印象だ。
またPlanarの方にだけ右上側に小さなゴーストが出ている違いもある。
まとめ
総合的な結果としては、まあ当然と言うかミラーレス専用設計のLoxia35に軍配が上がったが、個人的には今回の比較で評価を上げたのはむしろPlanar35なんですよね。
ミラーレスでは性能を発揮出来ないオールドレンズだと思ってましたが、予想以上にLoxiaに対して健闘していた。コンパクトで取り回しも良く、SHOTEN GTEなどの電子アダプターを使えばAF撮影も可能など中々魅力はある。
正直なところ購入後1年経過したLoxiaへの評価が難しくなったのも事実で、これがAFレンズであれば文句なしだが、それならBatis40と言う選択肢が用意されているのでうーんなんとも…
描写は開放からカリカリシャープな現代的ではなく階調性で魅せる個性派タイプなので、万人受けではないのは確かなんですよね。
まあ~ツァイスレンズを撮り比べて選り好み出来るのは贅沢な話なんでしょうけど、今後の使用頻度次第では再考する必要があるのかも知れません。
以上、ZEISS 35mm F2の比較レビューでした。
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