旧Contaxの標準レンズ【Sonnar 50mm F1.5】の外観レビュー
戦後日本メーカーも手本にしたZeissの大口径標準レンズ
今回のレンズレビューはドイツ製レンジファインダーカメラ『Zeiss Ikon Contax I~III型』の標準レンズ【Carl Zeiss Sonnar 50mm F1.5】です。
戦前から戦後にかけて製造されたコンタックスC/旧コンタックスマウントのSonnar 50mm F1.5は数多くのバリエーションが存在しており、東西ドイツ分断の影響も受け社名にも「Zeiss Jena」「Zeiss-Opton」など変遷が見られる。
この個体はCarl Zeiss銘で焦点距離は5cmではなく“50mm”と表記された戦後の最終モデルだと思います。
Tコーティングを示す赤いTマークはないがレンズを覗けばマゼンタ/パープル主体の反射色が見える。
最も新しいタイプとは言え半世紀以上はとうに過ぎたレンズ。今でもクロームの輝きを保ったままの姿には感心するばかりだ。
マウント | コンタックスC(内爪式) |
レンズ構成 | 3群7枚 |
絞り枚数 | 11枚 |
フィルター径 | 40.5mm |
全長×最大径 | 43×45.8mm※ |
重量 | 約160g※ |
発売年 | 1953年 |
Sonnar誕生話については設計者ルードヴィッヒ・ベルテレの存在が欠かせないが、あまりにも有名なのでほぼ割愛しますが、
レンズ構成は3群7枚で2群、3群目のゴツい3枚貼り合わせレンズがステキ。
ゾナーF2から改良を重ね1932年に完成したゾナーF1.5は前代未聞の大口径を実現しながらも高い描写性能を発揮し、ライバルであったライカに光学技術の高さを見せ付けリードした。
ある意味本当の“標準レンズの帝王”になれたのはこのゾナーF1.5なのではと思いますね。まあトータルのカメラシステムではライカが勝利しましたが。
戦後はNikonやCanonなど日本メーカーが大口径レンズ設計のお手本とするなど大きな影響も与えた。
これら時代を代表する銘玉でありながら玉数も割と多く相場も意外なほど安い(レアなニッケル鏡胴タイプは別格扱い)
最大の理由は後述するマウントタイプの特殊性によるものが大きいと見られ、オールドレンズとしてはマニアック寄りのポジションにある。
入手はContax IIIa(カラーダイヤル)と共にゲット。
ジャンク扱いだったので状態に文句は言えないが、残念ながらボディは色々と不具合ありの要修理品でした。
ファインダーにはカビ、独特のピント操作もスムーズではなくシャッターは10回に1回降りるかどうか。III型の特徴であるセレン式の露出計だけは今だ元気に動いている。
メインとなるレンズの光学状態は年代からすればまあ合格かなと言ったコンディション。絞り前後のレンズ面に薄汚れがあったので前群を外して清掃実施。
よく観察すると過去に一度は整備された形跡があり絞りの動きはスムーズだ。
内爪式レンズはボディ側のヘリコイドでピント合わせをするので、レンズ側の操作箇所は絞りリングのみ。
絞りのクリックはなく各絞り値は裏側にも刻印されている。フォーカス時にレンズ全体が回転するのでこれらは使い勝手を考慮した機能と思われます。
絞り羽根の枚数は「11枚」と豪華なものだが、ほとんどの絞り値でギザギザした形状になる。
画像はF2.8の絞り形状。古いモデルは13枚らしいが同じような形状なのかは未確認。
マウント部側面には「Made in Germany」の刻印入り
コンタックスC用マウントアダプター
そして他ボディで使うために必要なマウントアダプターは先に入手済み。ゾナーが手に入るまではレンズ不在で持て余している状態だった。
これも例によってジャンクセットの中にしれっと紛れ込んでいて、実際に手にするまでは正体不明のアダプター。
よくあるロシア製のキエフからマウント部を摘出した改造アダプターか、最近のKIPON製なら上々か…?と期待程々であったが
外観の特徴からかつて「近代インターナショナル」より販売されていたL39マウントへ変換する日本製アダプターで間違いなさそうです。
メーカーや製造国の表記は一切ないが品質はかなり良く、装着はガタなく滑らか。距離目盛はfeet表記で直感的に把握しづらいが不満を持つのは贅沢ですね。
feetの右側の刻印‘C’はContax用を示している。同じマウント形状でもわずかに仕様が違うニコンSマウント用は‘S’になっている。
ヘリコイドはスムーズで最短まで回し続けても先端がスッポ抜けたりは当然しない。
L39⇒ライカMアダプター併用でMマウント化
このアダプターの素性を知るためにコンタックスC用のアダプターを色々調べてみましたが距離計連動タイプは主に「カプラー」と呼ばれていて、
これはオールドレンズ専門店の NOCTO で取り扱いがあったものと同等品かもと推測している(試作品はfeet表記の記述が気になるが)
10年近く前にはRayqualからも販売されていたことが デジカメWatch の記事にある。現在は生産終了品で外爪専用のヘリコイドなしタイプだけラインナップされている。
コシナ フォクトレンダーからはミラーレス使用を前提として ヘリコイドアダプターと併用するタイプ が出ていたがこれも終了品。
結局の所、少ないながらも需要があるので発売してみるものの、採算性が良くないのか短期間で生産終了となるパターンがほとんどのようです。
これらは中古の出物が滅多にないレアモノなので、出ても定価並みかそれ以上の場合がほとんど。
現在、新品購入可能のカプラーはベネズエラ製の Amedeo Adapter がベストで過去の製品に囚われない非常に合理的な設計で評判も良い。
いずれにせよ単なる接続環ではない高価なカプラーがハードルとなる難儀なマウントです。
21世紀に誕生したZeiss Ikon ZMにオリジナルゾナーが宿る。
コシナツァイスからはオリジナルのオマージュとして「C Sonnar T*50mm F1.5 ZM」があり真っ当な思考ならそちらを選ぶだろうが、この本家ゾナーとの組み合わせはなかなか熱い。
ファインダー上で確認する限り距離計精度にズレはなく無限遠もピッタリ。
まあフィルムカメラはロマン重視で実際に使うかは決めておらず、
実用性ならこの組み合わせが本命。α7IIIと『TECHART LM-EA9』でAF化を実現。
ピント合わせはLM-EA9のレンズ全体を前後させる動きになり鏡胴が回転せず取り回しが向上。
旧C⇒L39カプラーは手動の補助ヘリコイドとなり、2つのアダプターを最大まで繰り出せば「約46cm」まで接写出来る。
フィルター径は現行生産されている「40.5mm」でSONY Zeissの保護フィルターを付けてみた。
レンズフードは以前にM-ROKKOR 40mm F2用に購入した汎用メタルフードがちょうど良さそうでした。保護フィルターの上から装着してもケラレは出ません。
まとめ
個人的には完全スルーと決めていたマウントだったのでレンズ、アダプター共に比較的安価に揃えられたのは幸運でした。
まあそれでも50mm以外は入手性が低いものばかりなので他のレンズを集める気はありませんね。
仮にアダプターにまで手が出せない場合、レンズとボディがセットで手に入ればいっそフィルム専用と割り切るのも選択肢の一つにあるが旧コンタックスボディはお世辞にも使いやすいカメラとは言えない。
とりあえずはミラーレスでゾナーF1.5の実写レビューを行いたいと思います。
以上【Contax Sonnar 50mm F1.5】の外観レビューでした。
【旧コンタックス】Contax Sonnar 50mm F1.5 実写レビュー
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