ホームカメラレンズ標準【L39マウント】Canon 50mm F1.8 世代比較レビュー

【L39マウント】Canon 50mm F1.8 世代比較レビュー

レンジファインダー用標準レンズ【Canon 50mm F1.8】の比較レビュー

キヤノン製L39マウントの50mm F1.8を比較

今回はCanonのレンジファインダー用標準レンズ【CANON LENS 50mm F1.8】の世代比較を行ってみました。

Canon 50mm F1.8 L39

選んだのはI型(1951年)とII型(1956年)の2本。どちらも光学コンディションに問題なく軽微な拭きキズがある程度。

◆キヤノンカメラミュージアム:Serenar 50mm F1.8 I

◆キヤノンカメラミュージアム:CANON 50mm F1.8 II

レンズ構成は共に4群6枚のガウスタイプ。オールドレンズとしては特筆するような強いクセもなく安定感のある優等生タイプと評価されている。

I型は前期型Serenar銘とCANON LENSに変更された後期型があり今回は後期型。違いはネームのみで光学系は同一と見なされています。

多少の変更が加えられていると思われるII型はこのレンズで致命的な持病となる【中玉クモリ】がない個体。正確には中玉の定期清掃でクリアな状態を維持している。

クモリの発生箇所は絞り後方の3群目。根本原因は使用硝材そのものと言われ完治は不能。現状対策としては防湿庫保管で進行を遅らせるのが精々。

長期間経つと当該レンズ表面に結露のような水滴が着いた状態になりそのまま放置しているとコーティングとガラス表面が侵食されソフトフォーカスレンズへと変貌する。

この持病により流通個体の大半はジャンク同様となり市場価値も低い。残念なことにこれはF1.8 II型だけではなくIII型、50mm F1.2やF2.8などにも見られます。

I型や 過去にレビューした50mm F1.4 はクモリ持病が無く良個体は比較的入手しやすい。

Canon 50mm F1.8 L39

I型は鏡胴の所々にサビが出ているのが残念。

外観デザインはII型で一気にモダンスタイルに変わり、所謂ライカコピーからの脱却を図ったと見える。

重量はシルバークロームの「270g」から「177g(実測)」と大幅な軽量化を実現。

II型のマイナーチェンジであるIII型は酷似した外観だが見分けるポイントはいくつかあるようだ。

◆キヤノンカメラミュージアム:CANON 50mm F1.8 III

例えば被写界深度目盛からマウント面までの間隔の違いや真鍮製の距離計カム側面のヘリコイド溝が露出しているかどうかなど。絞りリング周りにも微妙な違いはあるがちょっと分かりづらいかも。

Canon 50mm F1.8 Lマウント

II型に変わり最小絞りがF22に拡大。絞り指標は等間隔になり操作性や視認性が向上している。

Canon 50mm F1.8 L39
I型 F4 II型

絞り形状の違い。I型は円形に近い10枚絞り。対するII型は11枚のギザギザ丸鋸状になっている。等間隔絞りになった弊害とも言われるが真相はよく分からない。

またキヤノンカメラミュージアムを始め一般的にII型は9枚絞りと紹介されているが、恐らくそれはIII型に至るマイナーチェンジ後の最終的な仕様と思われます。

ネット中古をざっと確認しても絞り枚数が異なる個体が確かに見られシリアルナンバーを調べると仕様変更の変遷が分かるかも。

Canon 50mm F1.8 L39

レンズコーティングにも変更がありI型はアンバー+マゼンタ系、II型はほぼアンバー系が占めている。

これにより逆光耐性やカラーバランスにも違いがあるのか気になる所。

実写比較設定

使用ボディ:LEICA M10-R・玉ボケ比較のみSONY α7III

ISO100固定、フード、フィルターなし
Adobe LightroomでRAW現像、同パラメーターで書き出し

遠景解像

Canon 50mm F1.8 L39

赤枠内の中央と右端の2点を拡大比較
以下、I型/II型はType-I/Type-II等でも表記します

中央部

Type-I / Type-II

Canon 50mm F1.8 L39

2本とも中心画質は開放から良好。絞り込むほどにシャープになりF16で回折現象により解像低下が見られる。

70年も前のレンズと言えど中心画質に粗が無いのは流石単焦点。

周辺部

Type-I / Type-II

Canon 50mm F1.8 L39

周辺部の開放付近は甘いがF4辺りから良好になる。

全絞り値を通して見れば大きな差はないが、II型が性能ピークに達するまで少し遅れを取っているようにも見える。

また両者わずかに倍率色収差が出ることもあるが現像ソフトでの後補正は容易。

近接撮影・ボケ

ギャラリー形式の画像はクリック拡大後、画像内左右アイコンやキーボード左右キーで切替え可。

上:Type-I
下:Type-II

ほぼ最短撮影距離1mの撮影。共に4群6枚のガウス構成なので前後のボケ味に目立った差はありません。

違いが出たのは色調の差。I型はアンバーの暖色傾向でII型は忠実に近い寒色傾向。

モデルチェンジすると寒色寄りになるのはFD50mm F1.4の比較でも同じでしたね。

玉ボケ

上:Type-I
下:Type-II

室内の近接撮影で大きな玉ボケを出すためにこの比較のみα7III+ヘリコイドアダプターで1m以下の接写を行った。

開放F1.8を見ると玉ボケは酷似しており口径食も同等だ。

問題はそれ以降で絞り羽根の形状によって明確な個性が現れてくる。

Type-I  F2.8  Type-II

やはり目を惹くのはII型の手裏剣か丸鋸状のギザギザ玉ボケ。これをどう活かすかはセンス次第でしょうかね。まあ玉ボケ撮るなら開放でいいんじゃないかな。

あと玉ボケ内に写る点々はガラス内の気泡か微細な点キズによるもの。カビやバルサム切れが出ている場合はもっと見苦しい玉ボケになります。

逆光耐性

上:Type-I
下:Type-II

開放では両者とも虹色のサークルゴーストが出現。その後はII型のフレア・ゴーストが少なくリードしている。

モデルチェンジで逆光耐性が改善しているかに思えたが、F5.6以降で濃いオレンジのゴーストが目立ち始めた。

どちらもオールドレンズらしくフレア・ゴーストを楽しめそうだが個人的にはI型の方が好み。

コマ収差

点光源にピントを合わせて画面端を拡大。コマ収差/サジタルコマフレアを比較。

Type-I / Type-II

これは玉ボケ撮影にも使った室内用LEDライトで撮ったので屋外の遠景よりも収差は強く出ているかも知れない。

開放では同等のコマフレアだがその後絞っていくとI型の方が良好に改善していくようだ。

II型は妙にダラダラした印象で微妙なピント位置の差や個体差が出ている可能性もある。

光芒/光条

Type-I F16 Type-II

2本ともF16で比較。I型は偶数10枚絞りで10本の光芒。

II型は奇数11枚で倍の22本もの光芒が伸びる。このウニ型は主張が激しいので好みがわかれる所。また右斜め下にゴーストが出ている。

まとめ

結論として描写性の違いは確かにあるものの並べて比較してようやく分かる程度。

オールドレンズとしては『個体差』の範疇に収まると言っても良いかなと。個人的には使い分けるほどの差異は感じませんね。

まあ捉え方としては性能的にはI型で完成しており、その後モデルチェンジの度にコストダウンを図りつつも基本性能を維持し続けていたのは流石キヤノンでしょうね。

とは言えII型/III型は中玉クモリの持病により美品を探せば相応の労力を割くことになるので中玉が曇らないI型が断然おすすめ。

ずっしりとしたシルバークローム鏡胴も所有欲が高い。流通数も多く相場からすれば格安の1本。拘るならSerenarネームの前期型を探しても良いでしょうね。

以上「Canon 50mm F1.8」の比較レビューでした。


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