フィルム一眼レフ【フォクトレンダー Bessaflex TM】の外観レビュー
M42マウント一眼レフで最強候補となる一台
【Voigtlander Bessaflex TM】はフィルムレンジファインダー機のBessaシリーズで既に成功を収めていたコシナがシリーズ唯一の一眼レフとして2003年に発売。
ブラックとシルバーの2種類がありそれぞれペンタ部の形状が大きく違う。
マウントは古今東西あらゆるレンズが存在するM42スクリューマウントを採用、モデル名のTMはネジ込み式マウントを示すThread Mountから来ている。
ベッサシリーズの一員らしくダイヤルやレバーなどの一部パーツが共通化されアクセサリーにも同様の拡張性があります。主な特徴を挙げると、
・外装はマグネシウム合金で軽量かつ高い質感
・定評のある最高1/2000秒の機械式シャッター
・名機ペンタックスSPを彷彿させる測光スイッチ
・明るくピントが掴みやすいファインダースクリーン
マグネシウム外装の機械式一眼レフはかなり珍しく、往年の真鍮ボディが持つ重厚感こそ無いが手に取ってみると現代的なスマートさを感じる。
フォーマット | 24×36mm 35mmフィルム |
マウント | M42/プラクチカ |
シャッター | 機械式・縦走行メタルフォーカルプレーン 1/2000~1秒・B・フラッシュ同調速度1/125秒 |
ファインダー | ペンタプリズム式 倍率0.84・視野率94% |
測光方式 | SPD・TTL中央重点平均測光・3点LED表示 |
使用電池 | LR44/SR44×2個 |
外寸 | 135.5(W)×89(H)×52.5(D)mm |
重量 | 485g |
発売期間 | 2003/05~2006/9 |
発売時価格 | ¥50,000 |
当時は即完売とは行かず販売終了後も新品在庫がセール価格で売られていたそうです。時代はデジタル普及目前ですしニッチ過ぎた製品だったのかも。
現在は流通数が少な目で動作品には定価以上の値が付く。まあベッサシリーズ全体が高騰してますからね。
私は後述する“ミラーずれ”による訳あり品で格安入手。その後コシナで修理点検を実施してトータル費用は定価より安く収まった。
装着レンズ
先に装着しているレンズの紹介。
「CARL ZEISS JENA II 24mm F2.8 MC MACRO」割と珍しいレンズだと思います。時代的にPRAKTICAブランド末期頃の一眼レフに合わせたものでしょうかね。
まあ分かる人には即バレですがこのレンズはツァイス製でもドイツ製ですらもない日本製のOEMレンズ。
正体は「COSINA 24mm F2.8 MC MACRO」
当時は新品でも安価に販売されていたコスパ重視の広角単焦点です。
ツァイスイエナ以外にもMirandaやvivitar、EXAKTAネーム等で広く供給されていたようです。
スペックもオリジナルと同様で最短0.19mのワイドマクロ撮影が可能。
マルチコート仕様ですが逆光には弱いです。
鏡胴は全体的にコストダウンが見られる作りでピントリングやフィルター枠はプラ部品、レンズ銘版や距離数字はプリント。絞りリングとその上の距離目盛環は金属製で彫刻文字。
レンズ単体だとチープさは否めないがBessaflexブラックとの相性は案外悪くない。ボディもレンズもコシナ長野工場製ですよねこれ笑
もう一つは旧東ドイツ製「Meyer optik Oreston 50mm F1.8」ゼブラ柄も結構似合いますね。
個人的にベッサフレックスで使ってみたいレンズはこの辺り
・Carl Zeiss Jena Flektogon 35mm F2.4
・Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8 (凹みウルトロン)
・Voigtlander ULTRON SL 40mm F2 (Cosina)
ボディが見た目より軽量なのでそこそこ明るくコンパクトな単焦点が似合うと思いますね。入手性の良いTakumarなどで揃えるのも悪くないですが、やはり独ブランドレンズに惹かれます。
ただ全てのM42レンズが付け放題と言う訳ではなく各メーカーの独自仕様によって装着不可、後玉がミラーと干渉するなど完全互換ではない点は留意が必要。
外観各部
一眼レフの全体印象を決めるペンタ部は全高を抑えたとんがり頭で往年のMF一眼レフを思わせる精悍なシルエット。
シルバーの方はまんまTOPCONの再現でそれに合わせて銘玉TOPCOR 58mm F1.4もコシナから限定復刻していた。
アクセサリーシューは設置されておらずオプションでシンクロコード付きのシューアダプターがある。
フロントのネームプレート下部にはレンズのリア側と干渉を避けるための凹みが設けられているが、大柄なレンズはこれを越えて干渉する場合があります。
ペンタ部の形状が異なるシルバーは干渉リスクが低くなっている。
ベッサフレックスを入手する際の必須確認ポイントはミラーの状態。
この問題はコシナ製一眼レフ共通の持病である所謂「ミラーずれ」です。両面テープで固定されているミラーが経年劣化で下にズレてくる症状。
ミラーがズレ下がった状態だとピント精度が狂う他、そのままシャッターを切るとマウントやレンズ後玉と接触した衝撃でミラーに欠けや割れが起きる危険がある。
マウント径が小さいM42のベッサフレックスは特に破損率が高くジャンク扱いの個体を多々見かける。さらに割れたミラー片がスクリーンやシャッター幕を傷付けると最悪でしょうね。
この個体はコシナの正規修理でミラー交換済み。ちなみに修理依頼をした時点でスクリーンの部品は払底していました。
軍艦部の各ダイヤルや巻き上げレバーなどは他ベッサ機と同様にシンプルな配置。シャッターダイヤルとISOダイヤルはベッサTと同じ部品に見える。
巻き上げレバーは分割巻き上げ可能。レリーズロックの機能はありません。
シャッターフィーリングは歯切れよく比較的静音で低ショックです。過去に所有していたコシナ製OEM一眼レフの賑やかなシャッター音と比べると明らかに別物ですね。
ペンタックスSPのオマージュなマウント側面の測光スイッチ。上に押し上げると露出計がオンになり実絞り測光となります。
最後まで押し上げるとスイッチにロックが掛かりレリーズと同時に解除される。ロック手前でも露出計は作動します。
スイッチの部材はプラで金属製だったペンタックスSPと比べると感触はあまりスムーズではない。
裏蓋はベッサR2以降と同じグリップラバー付き。余計な機能のないスッキリした見た目が良い。
視度補正レンズの純正品は用意されていないがニコンの「DK-20C」がアイピース溝にピッタリ入り実質の専用品。この機種だけでなくベッサシリーズの角窓ファインダーは全て同サイズです。
ファインダー性能はM42一眼レフでは恐らく最高峰。視界が明るくピントの山が掴みやすいスクリーンはNikon FM3Aと同等品が使われているとも言われている。
極シンプルなフィルム室。フィルム装填も簡単で失敗は早々起こらないでしょう。
使われているモルトは裏蓋のフィルム確認窓とヒンジ部分のみ。
裏蓋に着脱ピンなどはなく本体と分離は出来ません。
ボトムカバーも他ベッサ系と共通部品。電池蓋はZEISS IKON ZMとも同じですね。
露出計の電源は「LR-44/SR-44」のボタン電池2個。
端にはトリガーワインダー用のカプラーもあります。
ホールド性を向上する純正サイドグリップ。もちろん他のベッサと共有可能。
これ今単品で買うと結構高いアクセサリーなんですよね。これはキズありで割と安かったです。
サイドグリップも悪くないのですがボディ全体にグリップ力が付く純正ケース装着したこのスタイルが好み。
これはベッサL用のボディケースでジャンクカゴから発見。経年劣化がありちょっと修繕が必要だったが何ら問題なく使える。
まとめ
現状最新のM42一眼レフとして貴重な一台です。
しかし現在の割高な相場で相応の価値があるかはハッキリ言って微妙。
あるカメラチェーン店だと中古が約10万でショーケース並んでいたのは流石にやり過ぎ。繁華街だからインバウンド価格なのかも知れないけど。
別にネイティブM42ボディでなくても、例えばKマウント⇒M42に変換するペンタックス純正アダプターがあるように代替案はいくつかあります。
アダプターを介せば常に実絞りでファインダーが暗くなるデメリットこそあるがMX、LX、MZ系など好きなボディでM42レンズは使えますからね。
まあ実用性も所有欲も満たせるモデルではあるので欲しいと思えば在庫がある内に確保しておいても良いとは思いますけどね。
以上【Voigtlander Bessaflex TM】の外観レビューでした。
【フィルム撮影】CARL ZEISS JENA II 24mm F2.8 MC MACRO 実写レビュー
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