フィルムコンパクトカメラ【CHINON Bellami】のレビュー
キュートでエレガントなチノン・ベラミ
【CHINON Bellami / チノン・ベラミ】は1980年に発売された目測式の35mmコンパクトフィルムカメラ。
OLYMPUS XAを始めとしたレンズバリア付き超小型ケースレスカメラが流行だったころ、各社が趣向を凝らしたユニークなカメラを送り出していた中でも特に異彩を放つ一品。
製品のキャッチコピーは
「アクティブ・ギャルの気になるベラミ。」
若い層を狙ったカジュアルなカメラとして売り出していたようだ。外箱や取説にはキャッチコピー付きの写真が大きく印刷されており、小恥ずかしく購入したカメラおじさんがいたかも知れない笑
フォーマット | 24×36mm 35mmフィルム |
レンズ | チノネックスカラー35mm F2.8/3群4枚 |
シャッター | 絞り兼用電子シャッター 1/8~1/1000秒 |
フォーカス | 目測式ゾーンフォーカス |
ファインダー | アルバタ式ブライトフレーム 視野率85% |
露出制御 | Cds プログラムオート |
その他 | 専用外部ストロボ AUTO S-120 |
使用電池 | LR44またはSR44×2 |
外寸 | 105×63×33mm |
重量 | 220g |
発売時価格 | ¥26,800+6,000 (本体+ストロボ) |
ベラミ最大の特徴は観音開き式の沈胴レンズ。巻き上げレバーに連動してガバっと飛び出す仕組みはとても珍しくユニーク。
この沈胴タイプは古くにフォクトレンダーのヴィテッサがあり、国内メーカーでは「PETRI CF35」くらいでしょうか。
そのボディサイズは特筆もので
105(幅)×63(高さ)×33(奥行)mm と35mmフィルムコンパクトの中でも最小クラス。重量も220gでいつでもカバンに入れておける。
それとは別にほぼ同じサイズで距離計連動、絞り優先AEにした「OLYMPUS XA(1979)」の前代未聞っぷりにも驚くが。
またこの時代によくあった横付けタイプのストロボが付属品として用意されていたがこれは欠品でした。
ボディの貼り革にはバリエーションがあり定番のブラックを始め、スエードのレッド、グレーなどがあった。
私が入手した個体はレッドのスエード(スエード調のフェルト生地かも)でしたが色褪せと収縮があり見栄えが悪かったので、クロコ型のレザーに張り替えてみました。結果は大満足で高級感も増して愛着も強くなった。
ベラミを独創的なカメラとして引き立てるのがやはりこの2枚のレンズカバー。
カメラ名と共に貴婦人と馬車の絵柄が入ったプレートは真鍮製。カメラに詳しくない人が見れば舶来品と思うようなデザインですね。
当時はコレが賛否両論だったらしく硬派なユーザーからは敬遠されたそうで。それを見越したのか絵柄を無くしたシンプルなレアバーションも存在する(まぁチノンと言うだけで見向きもしない人もいたでしょうね)
また「Revue 35 CC」の名で海外メーカーへOEM供給もしていたようだ。
しかし変り映えのしない現代カメラに見飽きた目には、レトロで非常に魅力的なチャームポイントとして輝く。昭和より令和のアクティブギャルからの方が支持を得られるはずだ。
搭載レンズは「CHINONEX 35mm F2.8」3群4枚のテッサー型。
コンパクトカメラでよくある38mmではなく35mmをしっかり載せてきたのは立派。
シャッターは絞り兼用の2枚ビハインドシャッター。プログラムAEの「1/8~1/1000秒」セイコー電子シャッターを採用。この小型ボディで1/1000秒が切れるのはスゴイ。
ただプログラムAEには少しクセがあり、1/8~1/250秒までは開放F2.8で撮影するようになっているようだ。通常はF2.8のレンズだと1/250秒辺りで少なくともF5.6には絞るはず。
実際にピントが合っているか分からない目測式カメラの特性上、出来るだけ絞り込んだ方が失敗は少ないのだが、何か意図があったのだろうか。
ピントリングは小さめながらも操作はしやすい。
鏡胴には距離指標と共にゾーンフォーカスマークが入っている。最短撮影距離は1m。
グリーンの3m地点でクリックあり。スナップ域が多いであろう目測式カメラでは、まぁここに合わせておけば一応OKな基点距離となる。
レンズを引き出した状態で裏側から覗くと、2段ほどの蛇腹構造になっているのが確認できる。
小型ボディに沈胴機構を組み込むのは簡単ではなく、一般的にはフレアカッターや遮光幕などを用いて内面反射対策をする場合が多いがベラミは愚直ではあるが確実な効果のある蛇腹式を採用した。
何度も動かす箇所で蛇腹素材の耐久性が気になる所だが、特に劣化はなく丈夫そうに見える。
上部はシンプルな構成。巻き上げレバーは上の画像が予備角ポジションでこれより押し戻すとレンズも連動して引っ込む。
シャッターボタンは適度なストロークで軽め。半押しで緑のバッテリーチェックランプが点灯します。
ファインダー内表示はブライトフレームのみ。すぐ横に露出警告ランプがあり1/60秒以下で赤に点灯する。
難点としてベラミのファインダーはクモリやすく、ほとんどの個体で発生していると思います。
この個体も若干のクモリがあったので清掃のためトップカバーを外してみたが、ファインダーブロック上には配線がいくつもあり、むやみに触るとヤバそうな気配を感じたのでそのままにしておいた。まぁ構図は普通に確認出来るので許容範囲内です。
設定フィルム感度は「ISO25~400」
使用電池は簡単に調達出来るボタン電池 LR44またはSR44を×2個
底のバッテリー蓋はロックが少し緩いかも。
ベラミが好きになり過ぎて後継機種である「チノン ベラミAF」も確保済み。
カバーが開いてレンズも飛び出すぞッ!と言う特徴は引き継いでいるものの、残念ながらそれ位しか見所のない微妙なカメラになってしまっている。
機能面は80年代後半の時代相応に自動化されているが、他社と比較しても貧弱な性能が目立つ。レンズは35mm F3.9、シャッターは1/60と1/120秒の二段階と非常に割り切った性能。
おまけにストロボ非発光時はストロボを指で押し込む(ロックは掛からない)と言うチープさ笑 この時期はチノンのカメラ事業も切迫した状況らしかったので察するべきか。
ただ一つ、フィルム確認窓以外にモルトが使われていない点は評価したい。初代ベラミのモルト貼り替えは結構面倒でしたからね。
またどう言う訳かベラミの綴りが“Bellami”から“Belami”に変わっている。
時代は変わり、2014年には約20年ぶりのオリジナル新作カメラ「CHINON Bellami HD-1」なるフルHD レンズ交換式デジタルカメラが発売された。2016年に販売終了。
チノン・ベラミ フィルム作例
使用フィルム:FUJICOLOR100
Nikon ES-2でデジタイズ後、Adobe Lightroomで書き出し。
レトロデザインのベラミに似合いそうな撮影場所として選んだのは、大阪北区の中崎町。古い長屋をお店に改修したお洒落スポットとして人気のエリアをブラっと街角スナップしてきました。
不慣れな目測式であったが結果を見ると杞憂だった。上の写真はこんなモンかとピザ絵の柱を狙ってみたらピントバッチリ。フィルム1本中でボツレベルのピンボケ写真はなかった。
露出計の不具合もなく一安心。モルト貼り替え後の光漏れもなし。
カワイイ見た目が注目されるベラミだが、描写性能についても実際に使った人からは概ね高評価のカメラです。
1990年発行「クラシックカメラ専科・No.16/コンパクトカメラ」に載っている性能評価コーナーではRollei 35、Konica C35、MINOLTA HI-MATIC F、OLYMPUS XA、果てはCONTAX T、Big Miniなど名機が連ねる中においてもベラミの評価がやたらと高い。
簡単に説明すると、凡そのカメラは「開放ではややハロが見られ、コントラスト不足気味、中央はシャープ。絞ると改善し良好な画質」と言った内容だが、
ベラミは「開放からコントラストが高く、中央~中間域はかなり鮮鋭。絞るとさらに良い。」こりゃベタ褒めですよ。コントラストの高さについては蛇腹構造のおかげだろうと述べてもいる。
こうなれば~1/250秒までF2.8の変わったプログラムAEは開放描写に自信があったからこそと考えられる。
中央部拡大
コンパクトフィルムでここまで解像すれば十分過ぎます。
ジャケットの色がイイ感じに出て結構お気に入り。
路地裏多いし猫もいるだろうなぁ~と思ってたらホントにいました笑
フィルムで最も写したい色は赤
まとめ
カワイイ見た目に惹かれて手にしたカメラだが、描写性能も目測式コンパクトフィルムの中でハイレベル。間違いなくチノンの傑作カメラでしょう。
大ヒットしたOLYMPUS XAシリーズと比べると市場のタマ数は非常に少なく、駄カメラプライスで入手することは困難でしょうが気になるなら手に入れる価値は十分にあります。
チノンと言うメーカーは特に興味がなかったが、この一台だけで印象はガラリと変わった。フィルム撮影に飽きてしまっても手元に残しておきたい一品ですね。
以上【CHINON Bellami】のレビューでした。
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