【smc PENTAX-M 40mm F2.8】+【TECHART LM-EA9】のレビュー
旭光学の超薄型パンケーキレンズ
今回レビューするのはPENTAX Kマウントの超薄型パンケーキレンズ【smc PENTAX-M 40mm F2.8】です。
ペンタ部が陥没したPENTAX MXに付いてきたレンズで当然ジャンク品。期待もそこそこでしたがレンズは驚くほどキレイで大当り。オマケ同然となったMXはジャンクで放流となりました。

マウント | ペンタックスK |
レンズ構成 | 4群5枚 |
絞り枚数 | 5枚 |
最短撮影距離 | 0.6m |
全長×最大径 | 18×63mm |
重量 | 110g |
発売年月日 | 1976年 |
発売時価格 | ¥17,000 |
定価は格安《¥17,000》でこれより安い同時期の純正レンズは50mm F2の¥12,500くらいです。
少し広い標準画角として『準標準』の独自カテゴリが与えられていたものの、訴求力に乏しく大して注目されないまま短期間で生産終了。
そして新品で買えなくなった途端に定価以上へ高騰するのがパンケーキレンズのお決まりパターン。皆いつでも買えると思っちゃうんですよね。
電子接点付きのPENTAX-Aに更新されずカタログ落ちした所を見ると製造コストの割に合わないレンズだったんでしょうか。
さらに現在は取って代わる純正レンズも複数あり、あえてこのレンズを選ぶ理由はだいぶ薄れてしまった。
「smc PENTAX-FA 43mm F1.9 Limited」
「smc PENTAX-DA 40mm F2.8 Limited」
特にフルサイズ対応のFA43mmはKマウントユーザーでなくとも魅力的な銘玉です。

レンズ構成は4群5枚。基本的なテッサータイプの後方に一枚の補正レンズを追加、バックフォーカスの長い一眼レフ用に最適化した独自の設計。
そしてこのレンズを入手する際の最重要ポイントは【バルサム切れによるクモリ】の発生個体がかなり多いこと。3群目の貼り合わせレンズが原因で一般的な整備清掃では完治出来ません。
全面白濁しているものもあれば、パッと見クリアに見えても縁にバル切れが出ていたり状態に差がある。
もしクモリのないキレイな個体が入手出来たなら大事にしましょう。

F4 絞り形状
絞り羽根は「5枚」F4時は若干ギザギザした5角形になる。
フィルター径は「49mm」でPENTAXの小型レンズと共通だが前玉も小さく、厚みが増すので不要かも知れない。
レンズフードは標準用のラバーフードが指定されていたようだがラッパ状でスマートさに欠ける。ドーム/フジツボ型のフードを代用するのが良さそうだ。

極細のピントリングは指先だけの操作を強いられるがグリスのトルクがしっかり残っているので煩わしさはない。
最短撮影距離は「0.6m」と標準域としては長く近接撮影には不向き。薄型設計なのでこれに文句は言えないですね。
絞りリングはF4~F16の間に半段クリックあり。

マウント部の作りも他のPENTAX-Mレンズと同等のクオリティで後玉周辺の反射防止処理も丹念に施されている。
手頃なパンケーキレンズだからと言ってチープさは全くなく、プラ部品が多用される以前の高品質な金属鏡胴を堪能出来る。

SONY α7III+LM-EA9でAF撮影を可能にした姿。
どうしてもアダプターの厚みが目立ち、もはやパンケーキの恩恵は失ったも同然ですがオールドレンズ遊びに不便は承知。この程度は余裕で許容範囲内です。
それにLM-EA9によって最短撮影距離は「約33cm」まで短縮され弱点である接写性能を克服したメリットは非常に大きい。

フィルム一眼レフMZ-5nに装着。やはり本来のKマウントボディがしっくりきますね。
まあホントはプラ外装のMZ系ではなく金属ボディのPENTAX MXかLXに付けるのが最高でしょうがこれもセミクラシック的な雰囲気で結構似合ってます。
実写スナップ作例
ボディ:SONY α7III+LM-EA9
Adobe LightroomでRAW現像 レンズ補正なし

今回はAFアダプターLM-EA9の使用感も含めてのレビューとなりますが、まずこのレンズに関しては予想以上に高い実力を持った単焦点でした。
開放は程々に柔らかく、絞った時の切れ込みの良さは「おぉテッサーだなぁ…」と漠然ながらも感心するほど。

中心は一段絞るだけでピークに近いくらいシャープになります。そしてテッサータイプでありながら周辺までキッチリと解像するのが何気にスゴイ。
フィルム時代に設計されたテッサータイプはデジタルセンサーとの相性が悪く、周辺像は絞っても流れやすい傾向があるのですが、
このレンズは一眼レフ用でバックフォーカスが長いことや追加された一枚の補正レンズなどが効果的に働いているんじゃないでしょうか。

LM-EA9のAF動作はフォーカスエリアの「フレキシブルスポット:S/M/拡張」が一番安定していた。
ワイドやゾーンも被写体や画角によっては有効なんだけど意図しない箇所にAFが引っ張られることもあるので今回のような作例では不向きだった。

輝度差のある枝木部分に目立つカラーフリンジは出ていない。

旧型のLM-EA7は50mmよりも広角になると遠景のAF精度が悪くなる傾向がありレリーズ直後は再生拡大の確認が必要だった。
それがLM-EA9だとかなり信用できるレベルに向上しています。個人的にストレスを感じていた欠点だったので買い替えた価値はありましたね。

絞り開放で前後ボケを大きく出してみた。
ピント部は若干にじみを纏うがディテールはしっかりある。
背景ボケはやや二線ボケ、強い点光源があればエッジのある玉ボケが出ます(口径食もありバブルボケには及ばない)前ボケは割と自然ですね。

半分見切れてますが光芒は10本です。

あえてフレア・ゴーストを出すために撮った一枚。レンズフィルターは未装着。
逆光に強い印象はないが変な暴れ方はしないのでコントロールはしやすい。

まとめ
私が所有する40mmのエースは「MINOLTA M-ROKKOR 40mm F2」が筆頭に挙がります。
それでも今回はあえてこちらを選んだみたが満足の行く撮影結果が得られた。
スナップレンズとしては現代基準でも通用しそうな描写性能でテッサータイプの底力を再認識した気分です。
まあしかし、クモリなしの美品に高値出して買うような存在ではないですね…もう少し予算を足せばFA43mmリミテッドの中古に届きますので。
AFアダプターのLM-EA9も快適な動作で色々なレンズを試したくなりますね。
以上【smc PENTAX-M 40mm F2.8】+【TECHART LM-EA9】のレビューでした。

コメント