ヤシカ・コンタックスマウント 広角単焦点レンズの双璧【Carl Zeiss Distagon T* 25mm F2.8/AEG】と【YASHICA ML 24mm F2.8】の外観比較レビュー
ヤシカレンズの影に富岡光学あり
かつてカメラ事業を展開していた「ヤシカ/京セラ」はドイツ カール・ツァイスと提携して高級志向の35mm判一眼レフシステム
「ヤシカコンタックス(RTSシステム)」を展開する一方で、同一マウントを採用した「YASHICA」ブランド銘を冠した一眼カメラやレンズ群も販売していた(M42マウントの一眼レフは以前から製造)
価格帯は他メーカーよりも多少安価でヤシカブランドの知名度が高い一部海外への輸出用としての役割もあったようだ。
とは言え、大半のユーザーの視線はツァイスレンズの描写性能に向けられ、どうしても廉価版の印象があるヤシカMLレンズ群は大きく注目されなかった。
ところが昨今のオールドレンズブームによりヤシカレンズは一躍レンズとなった。
その理由は『富岡光学』の存在にある。オールドレンズファンなら知らないとは言えない幻の光学メーカーだ。
何が幻なのかと言うと、富岡光学はレンズを他メーカーへOEM供給することが主であり高い光学技術を持ちながらもブランド名が表に出てくることはほとんどなかった。“和製ズミクロン”で有名な「RICOH XR RIKENON 50mm F2」も富岡光学製で知られる。一応「TOMINON/トミノン」ブランドレンズも存在するが非常に数が少ない。
その後、富岡光学はヤシカの子会社となり日本製のコンタックス・ツァイスレンズ製造と言う大役を担う。「ツァイスに認められた光学技術」と言う実績を打ち立てたことから、他メーカーのレンズも富岡光学製“らしい”となると平凡なスペックのレンズでも相場が上がってしまうことも珍しくない。
その後ヤシカ・富岡光学は京セラの傘下企業となりましたが、京セラがカメラ事業を撤退したことでヤシカブランドは売却、富岡光学は「京セラオプテック」と社名を変更し現在も様々な光学製品の製造をしているようです。
簡単にヤシカや富岡光学の話をまとめましたが、私自身は富岡光学に対して過剰な特別視はしていません。日本の光学メーカーってどこも優秀で同時代、同スペックのレンズは高レベルで拮抗していると思いますよ。
ここから本題。

◆CONTAX Distagon T*25mm F2.8
◆YASHICA ML 24mm F2.8
この同マウントの2本の広角レンズは焦点距離が1mm違うだけのスペックでよく話題に上がるが、当時の販売価格差は約2倍。
オイオイやっぱり廉価レンズじゃねぇかと思いたくもなりますが描写性能はDistagon25mmに匹敵、いや超えたなどと巷の評判は熱い。ツァイスの主導なしで生産した日本光学の意地なのか。
しかし実際の比較となると、どうも表現が曖昧なものが多く、
「ディスタゴンは色のり強く味のある描写」「MLは日本製らしい生真面目で繊細な描写」など説得力があるような、ないような…
いろいろ参考にしてもハッキリとした結論が出ないので、自分でやってみたと言う訳です。
Distagon25mm | ML24mm | |
マウント | コンタックス/ヤシカ | コンタックス/ヤシカ |
レンズ構成 | 7群8枚 | 8群9枚 |
最短撮影距離 | 0.25m | 0.3m |
絞り枚数 | 6枚 | 6枚 |
フィルター径 | 55mm | 62mm |
全長×最大径 | 62.5×56mm | 48.5×65mm |
重量 | 360g | 285g |
レンズ外観比較

並べてみると全長に違いがありますが、ピントリングの位置が一緒なのが面白いですね。巻かれているラバーの凹凸も同じパターンが使用されています。
MLレンズをコンタックスボディに装着、またはその逆でも違和感のないようデザインの親和性を図ったように見えます。
ML24mmはグリーン着色の24mmの刻印でレンズの種類が判別しやすい。Distagon25mmはレンズキャップをしているとパッと見では判別しづらく、以前に別のレンズと間違えて持ち出してしまった事がある笑
「∞」マークをはじめDistagonの方が彫刻が細かく生産コストが掛かっているのかも。

最短撮影距離は
・Distagon25mm:0.25m
・ML24mm:0.3m
と接写性能に違いがあります。ピントリングはどちらも滑らかで操作性良好。
絞りは共に一段ずつのクリックですがDistagon25mmは最小絞りが「F22」まである。絞りリングのクリック感にもツァイス主導のこだわりがあるそうで、誤操作の少ない絶妙な感触が秀逸。

前玉側から。どちらもマルチコーティング仕様だがコーティング色が違います。
レンズ銘板を見るとML24mmはシンプルな面構えで、Distagon25mmは「Carl Zeiss T*」の刻印が誇らしい。
フィルター径は「Distagon:55mm」「ML:62mm」コンタックスの小型レンズは55mmが多く汎用性が高い。
またDistagon25mmの方は内部に反射防止塗料がビッチリ塗られておりレンズ周囲が真っ黒なのが見えます。レンズ構成による適切な処理からこう見える訳で、決してML24mmが手抜きと言う訳ではい。

マウント面から。ここでもコーティング色の違いが見えます。
Distagon25mmが凝ったマウント形状なのに対し、ML24mmは随分とあっさりしてます。パッと見では同一マウントには見えませんね。
またDistagonの方はレンズ交換指標の●マークが表に見えるのを嫌ったのかマウント面に施されています。

参考がてらにα7IIIに装着した際のサイズ比較の合成画像。どちらも比較的小型で扱いやすいですがDistagon25mmが少し長め。

その他の情報としてML24mmは専用フードはあるものの入手困難。しかも直径がデカく不格好なんです。
汎用品のレンズフードで広角対応と謳っていも24mmだとケラレる場合もある。いくつか試したところ「TEFNON 28-85mm」用のレンズフードがケラレなく使用できた。
デザインバランスも良く内側は植毛紙で処理されており質感も良好。まぁこれもとっくの昔に生産終了した古いフードで運良く新古品を入手できたものです。
外観比較まとめ
今回は外観のみ比較しましたが、
製品としてのモノの良さはツァイス主導で生産されたコンタックスレンズが数段上を行く文句なしのクオリティ。
決してヤシカMLレンズが安っぽい訳ではありませんが、価格による差別化は明確にあります。
しかしヤシカML24mmはクラスを超えた描写性能と言われていますから、やはり実写レビューが重要となりそうですね。
以上【CONTAX Carl Zeiss Distagon T*25mm F2.8/AEG】と【YASHICA ML 24mm F2.8】の外観比較レビューでした。
実写レビューについては以下をどうぞ。
【銘玉比較】Distagon T*25mm F2.8×ML 24mm F2.8 実写レビュー
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