【Carl Zeiss CONTAX Distagon T*28mm F2 AEG】の外観レビュー
希少なCONTAXの大口径広角レンズ
このレンズは父親の所有品で私個人は手を出そうとは思わないレンズなんですが、ネット情報も少なく折角なのでレビューとして残しておきます。
【Carl Zeiss Distagon T*28mm F2】はCONTAX/YASHICAスタート時からラインアップされていた大口径の広角単焦点レンズ。先進技術だったフローティング機構を搭載し近距離でも安定した高画質が自慢だった。
しかし、このレンズは製造期間が短くCONTAX現役時から“幻のレンズ”と言われています。当時父親がこのレンズに興味を持った時には既に新品在庫はなく、中古店を探し回ったそうです。
短命だった理由を端的に言えば「あまり売れなかった」が通説。
下位の「DistagonT*28mmF2.8」が小型軽量で引けを取らない高性能、値段は半額以下と常用広角として優秀過ぎたこと。複雑なF2は見るからに製造コストも高そうであまり利益の出なかった不遇のレンズだった。
依然として流通数は少ないものの、ネット市場の発展やオールドレンズブームによって昔よりか入手しやすい状況にはなっている。
マウント | コンタックス/ヤシカ |
レンズ構成 | 8群9枚 |
最短撮影距離 | 0.24m |
絞り枚数 | 6枚 |
フィルター径 | 55mm |
全長×最大径 | 76×62.5mm |
重量 | 530g |
発売時価格 | ¥146,000(AE) |
このレンズ最大の特徴は、広角とは思えぬ中望遠レンズのような長い鏡胴。コンパクトなレンズが多い28mmの中では特異な雰囲気を放っている。
昔のカメラ誌では“街中だと広角レンズと気付く人はなく自然な表情が撮れる”と評されていました。う~ん。今の時代ではやめておこう。
縦には長いが横はスリムなので、アダプターを介してもスマートなシルエット。ミラーレスとのバランスは良好でカッコいい。
重量は「530g」でこのクラスとしてはヘビー級。ちなみにSONY純正のFE28mm F2は半分以下の200g…ヤバッ。
まぁ好意的に見れば、今日はこれ1本で撮ってみようかと言う気分にはなれる。
Distagon25mm F2.8 / Distagon28mm F2 / FE55mm F1.8
他のレンズと比べてみてより分かる、異様に幅広いピントリング。操作性は完全に中望遠で他の広角レンズでは味わえない面白い感覚。
“ハリウッド・ディスタゴン”と呼ばれるレンズ
ところで、何でこんな長いレンズなのか?要するに、
「ツァイスの求める性能を当時の光学技術で形にしたらこうなった」からです。
レンズ枚数の多さは非球面レンズを使わずにソレと同等の性能を目指したから。
当時まだまだ高級硝材だった非球面レンズは、他社に衝撃を与えるようなスペックを持つ弩級レンズにのみ採用されていた。研削非球面、フローティング機構搭載の「Distagon T*35mm F1.4」が正にその役割を担った。
また《シネレンズ》の設計技術も導入されており、歪曲はもちろんフォーカス時の画角変動(ブリージング)が少なく、海外では古くから“HollyWood Distagon”の名で有名だそうです。このため日本よりも海外の方がコアなファンが多い。
ハリウッドなんてスペシャルな呼び名、並のレンズでは絶対に付けませんよね。最初聞いた時はシネマっぽい雰囲気に写るから?みたいな安易な想像をしたが、シネレンズ由来の光学的な根拠が一応あるようです。
もう一つ有名な話が、PENTAXに同スペックの兄弟レンズが存在すること。
ツァイスはヤシカと提携する以前に、旭光学/PENTAXと技術交流がありその際に共同開発したと推測されるレンズが数本存在する。
「SMC PENTAX K 28mm F2」もその1本で上の画像はレンズ構成の比較。酷似した構成であるものの、所々はレンズ形状に差異が見られる。これでどの位写りに違いがあるのか全く判断できませんが。
このレンズも製造期間は短く希少でディスタゴン同様に高値が付いている。
時は流れて21世紀にはコシナツァイスから同スペックのレンズが販売。レンズ構成に面影を残しながら現代水準にアップデートされた。しかし既に製造終了。
最短撮影距離は「0.24m」 Distagon28mm F2.8よりも1cm短い。別に0.25mでも文句は出なさそうだがフローティング機構の威力を見せたかったのでしょうかね。
絞りリングは一段づつのクリック。
ちょっと見えにくいですが、絞り羽根は「6枚」
一段絞ったF2.8にはAEタイプ特有のギザギザした手裏剣状になり、F4以降で解消する。このレンズに限ってはさらに生産数が少ないMMタイプでも絞り形状は変更されていないとのことです。
フィルター径は「55mm」ヤシコンレンズで最も汎用性のあるサイズ。
またこのレンズには独特の構造がありフォーカスの際にそれが見える。簡単に言えば「前玉が回転するのにフィルター枠は回らない」こと。上下の画像は無限遠と最短距離の比較です。
最短まで繰り出した状態。レンズ銘板の位置から前玉が回転しているのが分かるかと。そして外周のフィルター枠はそのまま直進する。前玉とフィルター枠の繰り出し量はそれぞれ異なり、フィルター溝が深くなっているのも分かる。
この独特の構造は同じくフローティング機構を搭載した「Distagon T*35mm F1.4」でも採用されている。ハッキリ言ってこの構造、組立にかなり手間が掛かるでしょうね笑
レンズ背面には製造国を示す「Lens made in West Germany」の文字。このレンズには日本製がなくAEG、MMGのみと言われています。
マウント部。黒いですね。
後期MMGはバヨネット爪が耐久性を増したシルバーに変更されている。と言うのが通説ですが、AEGでもシルバー爪の個体を見かけます。
それは単なるロット差か、後にサービスセンターで交換したのかは不明。
純正フィルム一眼レフ「CONTAX 167MT」に装着。大口径でファインダーは明るく、ピントの山も掴みやすい。確かにこれで広角撮影してる様には見えませんね。
まとめ
CONTAX Zeiss自信の一本で、実際に手にした人からも高評価された銘玉ではありますが、
今ではコレクター品としての価値が大部分を占めるレンズと言っても良いかも。純粋な光学性能では現代の広角レンズと張り合うのは厳しいです。
とは言え、少し使ってみた感触は現代レンズでは出せない力強い描写を出すレンズであると感じています。
レンズの質感なども含めて、良くも悪くも味を楽しめる玄人向きじゃないかと。
以上【Carl Zeiss CONTAX Distagon T*28mm F2 AEG】の外観レビューでした。
【広角】CONTAX Distagon T* 28mm F2 AEG 実写レビュー
コメントを残す