SONYの液晶プロジェクター「CPJ-200」のレンズをEマウント用に改造してみました。
目次
液晶プロジェクターレンズをミラーレスで使う
とうとうこんなモノにまで手を出してしまった…
以前にもプロジェクターレンズの改造は何本か行ってきましたが、それはフィルム写真用の「スライドプロジェクター」で改造レンズとしては特段珍しくないもの。
今回は完全なデジタル家電である「LCD/液晶プロジェクター」のレンズ改造にチャレンジ。ネットを探しても前例が見つからず未知の領域だ。
改造に使う液晶プロジェクターは「SONY CPJ-200」発売は1996年。前機種のCPJ-100から投影レンズを大口径化し画面の明るさなどを改良したマイナーチェンジモデル。
標準価格は98,000円と高価な製品ではあったものの、当時の家庭用プロジェクターとしてはまだ手が届く範囲の価格だったようだ。
搭載液晶は「1.3インチ/18万画素」と、もはや過去の遺物と言う他ないもので、今さら欲しがる人は… 消耗品のハロゲンランプも入手不可なことから完全に製品寿命が尽きた家電と言える。
しかし投影レンズのスペックを見ると「55mm F1.5」と大口径の単焦点レンズじゃないですか!これはミラーレス用レンズに改造したら面白いかも? と言うことでジャンク品を調達。本体は送料と大して変わらない価格で入手出来ました笑
ドン! いきなり完成後の姿。改造前の写真も撮っておいたんですが特に面白いものでもなかったので省略。
改造に使用したパーツはスライドプロジェクターレンズと似たような構成で短期間で組み上げられた。
・ステップアップリング52⇒58
・M52⇒M42 ヘリコイドアダプター
・M42⇒SONY E 超薄型アダプター
ステップアップリングは余っているものが既にあり、ヘリコイドアダプターは他の改造プロジェクターレンズのものと共有。
新たに導入したのが「M42⇒SONY E 超薄型アダプター」です。このアダプターの厚みはわずか1mmで極限までバックフォーカスを短縮出来る。最初から改造レンズ用途として作られたマニアックな中華製アダプターだ。
加工済みですがレンズユニットはこんな感じ。鏡筒全体はプラ製。
前玉根元に52⇒58のステップアップリングを通してエポキシ接着。
特筆すべきはこの後玉のデカさ。
F1.5どころかF1.2クラスに匹敵するサイズで、もしかすると中判並のイメージサークルあるんじゃねぇの?と期待が高まる。
また後玉がむき出しなのはバックフォーカスを合わせるために鏡筒後部を切除したからです。
フィルター径は「52mm」オプションにねじ込み式のワイコンレンズが用意されていた。
レンズコーティングはアンバー/パープル系。
大きな後玉はM42マウントの内径とほぼ一緒。
残念なのは、ここまでバックフォーカスを詰めても無限遠は出ませんでした。ピントの最長は2.5m辺りで遠景は諦めることになる。
そもそも室内使用のプロジェクターで無限遠ってのもおかしな話ですが。
SONY α7IIIに装着。なかなかバランスよく纏まって見た目は合格。
SONY製プロジェクターレンズなので純正レンズではあるよね笑
ヘリコイドアダプターは繰り出し量が半端じゃないのでマクロ領域は余裕。
55mm F1.5 実写作例
ボディはSONY α7III
Adobe LightroomでRAW現像
この55mm F1.5は結論から言うとクセ玉。まぁそれを期待してたんですがね。
解像するのは中央部のみ、かつ滲みのあるソフト描写で等倍確認はほぼ無意味。
そして残念ながらフルサイズで使うと四隅にケラレが発生しました。レンズを見た印象ほどイメージサークルは広くなかったようだ。
あまり接写し過ぎると像の流れが激しくなり、クセ玉としても看過出来なくなるほどに画質が崩れる。
強い逆光でフレアとゴーストを出してみた。逆行耐性はコーティングの甘いオールドレンズよりは高そうだ。
周辺減光とケラレで画面中央と周辺部の明暗差が激しく、測光方式が平均評価などでは中央がオーバーしがち。対策として「中央重点測光」が安定して撮影出来る。
光の状況によっては、それらの欠点のおかげで非常にコントラストが高く“見える”写真にもなる。またこう言った写真ならばケラレも気にならない。
ガッサガサのかなり騒がしい後ボケ。ぐるぐるボケは出ないようだ。
この写真は4:3の縦横比で上下をトリミングしていますが、それで四隅のケラレはほぼカット出来る。
プロジェクターの投影画面がアナログテレビと同じ「4:3」なのでそう考えるとナルホドなと思う。
これが一番のお気に入り。
単なる口径食だけではない形の玉ボケから察するに像面湾曲はもちろん、コマ収差も激しいレンズなのだろう。こう言う玉ボケのオールドレンズは何本か目にしたことがある。
プロジェクターレンズと言うことでバブルボケも期待していたが、スライド用とはボケが異なるタイプのようだ。
右端の鉄柱にピントを合わせたが、無限遠が出ずこれが最長のピント位置。
注目したいのは歪曲の少さ。プロジェクターレンズは歪曲収差が優秀なんだろうか。
まとめ
面白いと言えばそうなのだが、
イマイチ掴み所の分からないレンズで、何を撮るのに向いているのかハッキリとした手応えは感じていない。まぁ遠景が撮れず、常にF1.5なのでボケを活かした写真になることは間違いないでしょうね。
とは言えミラーレス用レンズに改造できたと言う成果は大きく、これを機に古い液晶プロジェクターを色々漁ってみるのもイイかもね。
以上SONY CPJ-200のレンズ55mm F1.5の改造レビューでした。