ライカMマウントの広角レンズ【LEICA SUMMARIT-M 35mm F2.4 ASPH.】の外観レビュー
デジタルネイティブ世代の新生ズマリット35mmを入手

ライカM10-Rを手にしてから【6bitコード付きの純正レンズ】を一本持つべきか?と言う考えが浮かんでは消え、いや今あるレンズで十分事足りてるし高くて買えない。無理。
そう諦めていた矢先、幸か不幸か『SUMMARIT-M 35mm F2.4 ASPH.』の美品中古の出物が。しかもあまり見かけないシルバーで付属品も完備…さらに純正のUVaIIフィルターも付いた文句なしのフルセットだ。
実の所「SUMMICRON-M 35mm F2 ASPH. (現行)」のお買い得品を待ち望んでいたが、これを見逃すと次は無いかも…と言う訳で晴れてライカ純正レンズが仲間入りした。
この出費の帳尻を合わす為に何本かのレンズを手放すことにもなったが、これライカとしては “お試し価格” のエントリーレンズなんですよね。あー恐ろしい。
売却レンズ内の1本 「ZEISS Loxia35mm F2」もお別れとなったが購入時以上の満額買取となり売り時としては良いタイミングだった。
同じMマウントの「ZEISS C Biogon T*35mm F2.8 ZM」も運用が被るので撮り比べてから手放すつもりでしたが結構性質の違うことが分かり一旦保留中。

マウント | ライカM |
レンズ構成 | 4群6枚 |
絞り枚数 | 9枚 |
最短撮影距離 | 0.8m |
全長×最大径 | 34×52mm |
重量 | 197g |
発売年 | 2014年 |
ライカ ズマリットの交換レンズと言えば大口径標準レンズ『Summarit 5cm F1.5 (1949) 』が最も有名で独特のボケ味があり今もファンが多い。
それとは光学的な系譜の繋がりがない新ズマリットシリーズはMデジタル黎明期の2007年に開放値F2.5に統一した4種「35 / 50 / 75 / 90mm」が発売された。
ライカ自身は新たにライカデビューするライトユーザーに向けて手に取りやすい価格のエントリークラスとして発売したが、当時は既存ユーザーの不評意見が多く販売店も乗り気ではなかったとか。調べれば色々とダメ出し批評も見つかります。
その後2014年に開放値をF2.4へスペックアップ、鏡胴デザインもリニューアルしたもののレギュラーポジションにはなれず販売終了済み。
結果としてブランディングが上手く行かなかった不遇のシリーズと言える。ライカも高価格が一層進み今後このようなシリーズは望めないでしょうね。

レンズ構成はライカ解説によると絞りを挟んだ4群6枚の対称型で6枚のうち3枚は異常部分分散ガラスを使用。
加えて新ズマリットシリーズでは唯一採用の非球面レンズ(ASPH.)を3群目に配置している。ちなみに同様の光学系である旧型F2.5にもASPH.表記はないが非球面は使われていたとの説もあります。
前玉が凹面の独特な構成に見えるがおそらくガウスタイプの変形型だろうか。そして特に広角の35mmとしてはバックフォーカス(撮像面から後玉までの距離)が特徴的に長い。
下の現行ズミクロン35mm ASPH.は後玉がマウントから突き出ており比べると全然違う。

設計の新しいズマリットはデジタルボディでシビアになる色被りや周辺画質にも十分対策された光学系だと思われます。
ズミクロンの方は97年発売の先代と同じ設計のままだが元々のポテンシャルが高くデジタルに合わせたチューニングを加える程度で十分だったらしい。

LEICA M10-Rに装着した姿。純正同士なので文句なしにマッチする。
カラーはブラックorシルバーどっちでも良かったんですけど、ブラックボディ×シルバー鏡胴はカジュアル寄りの雰囲気があり結構気に入っている。
レンズのシルエットで最も目を惹くのがフードの形状で現行のMレンズやライカQなどにも見られる先端を角型に絞ったモダンでスマートなタイプ。
レンズ本体との一体感は見事でフードは外付けの付属品ではなく常時装着が正装と言える。

フードはレンズ先端へのネジ込み式。ストッパー付きの正確な水平位置でロックされる。
フードを装着しない場合は保護リングを替わりにネジ込む。この場合は若干コンパクトになりフィルターワークが容易になる。
上の画像は純正UVaフィルターを装着しているがフードと保護リングには当然干渉しない。

絞り羽根は「9枚」で角のある9角形が最小絞り(F16)まで続く。
フィルター径は「E46」となり旧型F2.5や現行ズミクロン35mmの「E39」より大きい。

「ZEISS C Biogon T*35mm F2.8 ZM」と並べてみる。全長差はフィルター1枚分程度。
サイズやスペック自体は似たレンズだが操作性は結構違いがある。
最も違う点はピントリングの感触。Cビオゴンは標準的なMFレンズのトルクで万人に扱いやすい。
対するズマリットは想像以上に軽い。所有するMマウントレンズの中で最も軽い。
グリスが抜けたような嫌な感触ではなくトルク自体は均一です。これは個体差ではなく新ズマリットシリーズは全体的に軽めのトルク仕様らしいのです。
またヘリコイドの構造が他レンズよりも簡略的になっているのが触っていて何となく感じる。カム形状も平行カムではなく微妙に傾斜が付いているのもコストダウンなんでしょうかね。グリスのグレードも上位レンズと違うのかも知れない。
とは言えピント精度には全く問題ないので別に良いけどって感じですね。

ピントリングの操作箇所はCビオゴンが全周ローレットと小さなノブもあり操作法に柔軟性がある。
ズマリットはフォーカシングレバーのみ。歴史あるライカMレンズ35mmの多くがレバー式なので使いこなしたければもう慣れるしかない。

後玉の位置を比べるとフィルム用に設計されたビオゴン35mmとの差が一目で分かる。
細かい部分ではマウント側面に隣する距離計連動カムのヘリコイド溝が露出しているかの違いもある。
過剰な心配は無用だが、ここの溝からチリゴミを巻き込んだりグリスの染み出しなど不都合もあるので近年はライカ、コシナ/フォクトレンダー共に溝を隠す構造が増えてきている。

絞りリングは半段クリックあり。指先一本だけで回せるくらいに軽くとても静か。
最短撮影距離は「0.8m」M型ボディ距離計連動範囲の最短0.7mには一歩届かない。これは明らかにエントリーレンズであるヒエラルキーの一つとしか思えず残念ではある。
しかしレンジファインダーの35mmで何を撮るだろうと考えた時に最短0.8mでも特段不便はしないだろうと判断した。

6bitコード付きのマウント面。電子接点でもなく溝に着色しただけの識別コードなんですけどボディ側がオートでレンズ検出してくれるのは確かに便利だ。

レンズキャップはロゴ入りのかぶせ式が付属。フード、保護リング両方に対応する。
往年のライツ時代の分厚いキャップなんかと比べると薄くアルミ製かな。正直言って中華製の模造品と別格な品質差はないかも。
またこのキャップを長期間付けっぱなしにするとキャップ内側のフェルト跡がレンズ側に薄く残ることがあります。実際にこの個体のフードにもわずかな装着跡がある。これは拭いても取れません。
ボディ側のサムレスト装着跡と同じ現象ですね。私は保管時キャップを軽く乗せるだけにしています。

最後にミラーレス一眼のSONY α7III+LM-EA9に装着した姿。見た目はかなり上々。
ソニーのミラーレスはセンサー前のカバーガラスがライカMより厚く、特にレンジファインダー用広角レンズは周辺画質に難が出ることがままある。
しかしこのズマリット35mmはデジタル向け設計であることに加え前述のバックフォーカスの長さのおかげかこれと言って画質劣化は見られず良好に描写する。
むしろLM-EA9でAF撮影も可能となり最短撮影距離は0.3m程度まで接写可能となった。
正直言ってこの組み合わせの方がライカMボディで使うより便利なんですが、この為にズマリット買った訳ではないからね。メインはM10-Rで使うこと。
まとめ
ズミルックスやズミクロンを多数持っている人からすれば廉価なズマリットで何を嬉々として語っとるんやと言われても仕方ないが、国内メーカーと比べるとソニーFE35mm F1.4 GMの美品中古が買える金額。私にはこれが限界で身の丈としては十分過ぎますね…
既にぼちぼち使い続けて描写性も大体は把握出来そうな頃で、納得の行く写真が揃えば実写レビューも行いたいですね。
以上【LEICA SUMMARIT-M 35mm F2.4 ASPH.】の外観レビューでした。
【ライカM】LEICA SUMMARIT-M 35mm F2.4 ASPH. 実写レビュー

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