超大口径が魅せるドリームレンズの描写を堪能する
ボディ：SONY α7CII
Adobe LightroomでRAW現像 レンズ補正なし
レンズ外観は以下リンク
【ドリームレンズ】Canon 50mm F0.95 外観レビュー
今回の写真は全て「絞り開放：F0.95」で撮影したものです。
Canon50mm F0.95が“ドリームレンズ”と呼ばれる所以は開放描写にありと言って間違いないので安定感を求めて絞る考えは無作法とさえ感じるほどですね。
また晴天での開放撮影はNDフィルターなしでは厳しいかと思っていたが全く無用の心配でした。「α7CII：電子シャッター最高1/8000秒」でも露出オーバーに困ることはありませんでしたね。
開放では諸収差が顕著に発生し端的に言えば甘い写り。加えて逆光下ではフレア・ゴーストも容易く発生します。
この描写には好みが分かれるかと思われますが、オールドレンズファンであるなら歓迎すべき優れた個性となるはず。見たままの景色を忠実に再現するのではなく「レンズが見ている非現実的な光景」を写しているのだと強く実感できますね。
直近で入手した『アサヒカメラ・ニューフェース診断室～キヤノンの軌跡～』では50mmF0.95がCanon7と共に取り上げられていました。内容をざっくりまとめると
- 開放の実測F値は『F0.99』JIS規格の許容範囲内なのでスペック詐称ではない
- 開放でハロ大。像面湾曲が強く画角41°（約58mm）より外側は“使えない”
- 像面湾曲を除けばこのクラスとしてはたいへん優れた解像力を持つ
- 歪曲収差はタル型・糸巻き型の混合タイプ
- 専用マウント故に使用可能ボディが限られ用途的に特殊レンズと見なすのが妥当
新種ガラスを複数枚使った贅沢な設計となるものの真っ当に評価すれば無理の見えるレンズであることは明らかで下位50mmの上位互換となる性能は持っていないようでした。
キヤノン側の返答も「特殊レンズとして製造しております。常用レンズにはF1.4、F1.2が軽便です」と言った感じで、やはりキヤノンが他メーカーに先駆けてこのスペックを達成することが最大の存在意義であったと思えます。
ボケ味については背景は硬くザワザワした傾向で2線ボケは強く出る。前ボケは比較的穏やかです。
当時の国産レンズの通例でもある過剰補正/オーバーコレクションの光学設計によく見られるボケ味で個人的にも見慣れたタイプなんですが、超大口径の威力を持ってすれば独特の世界観も感じられる強力な持ち味となります。
ぐるぐるボケは少々あるが特に目立たない印象。ズマリット5cm F1.5などと比べると格段に大人しいはずです。
今回撮影した写真はRAW現像が思いのほかスムーズかつ思い通りに行えました。
α7CIIのセンサー性能の良さは当然として様々な条件でも階調が破綻することなくしっかり維持されていたのは光を潤沢に取り込める超大口径の懐の深さのようなものを感じましたね。
発色は開放での水彩画のような淡い色を基調として彩度を上げても違和感なく調整できます。
ピント面は球面収差による滲み（ハロ）を纏いソフトフォーカスのような描写となります。上の写真のピントは開放かつ画面下部でありながら意外とシャープなんですよね。
海外サイトなどではglow（輝き）と言う単語をよく用いてこのレンズの魅力を表現しています。様々な特徴的な要素が上手くハマることでDream Lensと呼ばれる幻想的な描写に繋がるのでしょう。
作例にはありませんが絞り込んで撮影した時はコントラスト・中心解像が相応に向上します。
その反面、絞り込んだ遠景は画面左右端（四隅ではなく）で急激に像が流れる領域がある。当初はセンサー前のカバーガラスによる画質への影響かと思っていたが、
これはアサヒカメラ記事内で言及していた像面湾曲の特性とおそらく一致しており要するにレンズ性能の限界となるのでしょうね。
まあこのレンズを使うとしても画質の均一性を求める人が果たしているのかと言う話なんですけどね。
ゴーストの色はレンズコーティングと同じアンバーカラー。またレンズ縁周りの反射と思われる虹色のリング状ゴーストも出現します。
ここまで容易かつ派手に出せるならお見事の一言ですが、逆光下での撮影に夢中になるあまりセンサー焼損しないように要注意です。
最短撮影距離は1mなので小さな被写体に寄って写すことは叶いませんが、周囲のボケの中に被写体を浮かび上がらせるような構図は得意と言えるでしょう。
玉ボケも2線ボケと同様の原理でにエッジの強い形状を見せます。
口径食の影響でバブルボケのような整った形にはならず中心部のみが円形で四隅はコマ収差の影響か半球状になります。
まとめ
ドリームレンズことCanon50mm F0.95は尖った個性を持つ標準レンズ。一般評価される光学性能に欠点はあるものの、個人的にネガティブな印象はなく非常に楽しませてくれますね。
ただ鏡胴がそれなりに大きく重くピントリングの回転角も広いので軽快にサクサク撮れるレンズではないことは確かです笑
非常に魅力的なレンズなのは間違いないのですが強くオススメできるとは言い難く、やはり60年ほど前のオールドレンズなのでアタリハズレも当然あります。
現状の相場に適正価格を見いだせない限りは危うきは近寄らずと言った所かも知れません。私の場合はオーバーホール費込みでも納得のゆく格安だったので満足はしていますね。
近年は中華製の同スペックレンズも何本か存在しており比較的安価なのでF0.95を気軽に体験するならそちらの方が失敗がないと思われます。まあレンズ自体にヒストリーやバックボーンはないので立ち位置は異なるのかも知れませんね。
以上【Canon 50mm F0.95】の実写レビューでした。
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