デジタル時代の新ズマリット35mmの性能を検証
今回はライカ純正のMマウントレンズ【SUMMARIT-M 35mm F2.4 ASPH.】の光学性能を様々なシチュエーションからチェックしてみました。
使用ボディ:LEICA M10-R / SONY α7CII
三脚使用・レンズフード、フィルターなし
Adobe LightroomでRAW現像 レンズ補正なし
遠景解像

まず公表のMTF曲線から見るざっくりとした印象は、
絞り開放から中心~中間の画質に優れており絞り込むことで一層向上。
周辺域はサジタル方向とタンジェンタル方向の低下と乖離があり、F5.6まで絞り込んでも画面端に甘さを残すように見えます。

実写では赤枠内の中央・中間・周辺部分を各絞り値で拡大
中央部

絞り開放から実用レベルの描写を確保し、F4でほぼピークに達します。F11以降は回折の影響で解像が低下しますが、全絞り値で高精細な解像力を発揮します。
中間部

中間部も中心部と同様に開放から良好に解像しています。
周辺部

周辺部は開放では甘さが感じられ、F4で幾分良好になり、F5.6で粗のない実用的な解像力に達します。ただし、四隅までしっかり解像させたい場合はF8〜F11を推奨します。
周辺画質は現代的というより、安定性のあるオールドレンズ寄りの印象です。
また、センサー前のカバーガラスの厚みが異なるα7CIIを使用した場合は、周辺解像のピークに約2段の差が生じ、同時に回折も見え始めるため、気持ちよく使用するのは難しくなります。
近接撮影・ボケ
α7CII+ヘリコイドアダプター使用で最短撮影距離0.8mからより近接して撮影。
ギャラリー形式の画像はクリック拡大後にキーボード左右キーや画像内の矢印アイコンから画像の切替え可。




前後ボケともにクセがなく穏やかで、2線ボケやぐるぐるボケなどの傾向も見られません。
フィルム時代の球面ズミクロン35mm(Pre-ASPH)などの硬めのボケと比べると、現代的なボケ味に感じられるかと思います。
ただし、最短撮影距離の仕様は0.8mと長いため、ヘリコイドアダプターなどを使用しない場合は、ボケを強調した写真が思いどおりに撮れないこともあります。

ピント部を拡大。
以下にボケ作例をもう一つ。





目立った軸上色収差はなく、フォーカスシフトも特に発生していないようです。
歪曲収差


公表チャートどおりの樽型の歪曲収差がありますが、この程度であれば普段使いで悪目立ちするほどではないと思います。
また、デジタルライカMボディでレンズ検出をオンにしてもこの歪曲は補正されないようです。
周辺光量落ち


周辺光量落ちは開放で大きく、実用上はF5.6で解消します。ごく平均的といった印象です。
それよりも、ライカM10-Rで撮影した場合は画面周辺にわずかにマゼンタの色かぶりが生じている可能性があります。特に画面左側で目立ちやすいように見えます。
撮影設定を変えてみたところ、RAWではレンズ検出をオンにすると周辺光量補正がかかりますがオン・オフいずれでも色かぶりは発生します。
JPEG撮って出しの場合はレンズ検出のオン・オフどちらでも色かぶりが軽減されていました。カメラボディの画像処理エンジンで色かぶり補正が行われている可能性があります。
とはいえ、このレンズでオール白背景を撮影するまではRAW撮影で色かぶりを感じたことは全くなかったため、個人的には実用上は無視してよいと思っています。
また、ライカM11からは裏面照射型センサーとなり基本的にはマゼンタかぶりは解消されているはずです。
逆光耐性






画面右上に太陽が入る斜光のアングルで撮影しました。
開放では画面左側にフレアがかかり、コントラストの低下が見られます。
絞り込むことでコントラストは向上しますが、画面上部にマゼンタのゴーストが出現し最後まで残り続けます。






もう一つのカットでもゴーストが見られますが、全体的には高いコントラストを維持しています。
逆光耐性は特に優秀というわけではありませんが、オールドレンズと比べると抑制は容易です。
また、このレンズはデザイン上スクエア型フードを付けっぱなしで使うことがほとんどだと思われるため、フードなしで撮影したこの作例よりは多少改善する可能性があります。
玉ボケ


35mm F2.4のスペックから玉ボケのサイズは控えめです。口径食も少々あるようです。

玉ボケには、非球面レンズの研削跡と思われる年輪ボケ・タマネギボケ(オニオンリング)と呼ばれる模様があります。
また、このレンズは開放でもごくわずかに絞り羽根が出ており、玉ボケの輪郭に絞り形状が現れています。
これらは木漏れ日などの自然光では特に目立ちにくいのですが、LEDなどの人工光では見栄えが悪く、好ましい印象は得られませんでした。
コマ収差

画面端に配置した点光源からコマ収差/サジタルコマフレアを確認。
開放では明確にコマ収差がありF4で改善、F5.6でも隅にわずかに残りF8で完全解消。
MTF曲線にある画面端の乱れがコマ収差に現れていると思います。
光条/光芒

絞り羽根は奇数の9枚絞りなので、絞り込むと倍の18本の光条が伸びます。
まとめ
デジタル時代の新生SUMMARIT-Mシリーズは、発売当時エントリークラスのレンズとしてラインナップされていたため、クラスを超える高性能が与えられたレンズ群ではないことは確かだと言えるかと思います。
また、シリーズとして短命だったことから流通数が少なく、中古価格の値崩れもないため、安価に入手できる機会以外はあまりおすすめできないのが正直なところです。
今回の性能検証では若干の粗が見える部分もありましたが、
個人的には実用面でそつなくこなせる優等生であり、鏡胴デザインの所有欲も高く、飽きて手放すような要素も特にありません。
私の技量ではこれをズミクロンに買い替えても大きな変化はないでしょうね。
以上、【LEICA SUMMARIT-M 35mm F2.4 ASPH.】の性能チェックでした。


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