ミノルタのフィルム一眼レフ【MINOLTA XD】のレビュー
ミノルタの先進技術が注がれたフィルム一眼レフ
ミノルタXシリーズの名機である【MINOLTA XD】を入手することが出来ました。しかもMDマウントの銘玉である「MD W.ROKKOR 35mm F1.8」付き。
ミノルタXDの発売は1977年で電子化著しい当時の一眼レフをリードするエースの一つであった。Xシリーズの花形としても意欲的な機能が盛り込まれており、
・世界初の絞り優先&シャッター優先が使える“両優先AE”を搭載
・格段に明るくピントが掴み易い独自の“アキュートマットスクリーン”
・ライカRシリーズのR4~R7のベースボディに採用された
などなど往年のミノルタを語るには欠かせない機種で、当時の広告には『このXDに十分対抗できる一眼レフは当分現れそうにありません。』との一文も。
代表的な競合機として「Canon A-1/1978年」が挙げられることが多い。
海外輸出版はXD7、XD11にモデル名が変更され、後に一眼レフで世界初の視度調整機能を内蔵したXD-sが国内限定で登場した。
フォーマット | 24×36mm 35mmフィルム |
マウント | ミノルタバヨネットマウント/MDカプラー対応 |
シャッター | 電子制御式縦走行メタルフォーカルプレーンシャッター 1~1/1000秒・1/100、バルブ時のメカシャッターあり |
撮影モード | 絞り優先・シャッター優先・マニュアル露出 |
測光方式 | SPC素子 TTL中央重点平均測光 |
ファインダー | ペンタプリズム固定式、視野率94% 倍率0.87倍 |
その他 | 露出補正±2、多重露出機能、専用オートワインダーあり |
寸法 | 136×86×51mm |
重量 | 560g |
使用電池 | LR44またはSR44×2個 |
発売年 | 1977年 |
販売時価格 | ネオブラック¥84,000、シルバー¥78,000 |
入手経緯はジャンク品扱いであったが、ボディレンズ共に大切に保管されていたのが伝わるとてもキレイな状態であった。
とは言え、このXDは電子制御カメラであるので外観はキレイでも不具合を抱えた個体が少なくない。
主な動作チェックポイントとしては
・シャッタータイムラグが大きくないか
・シャッター速度や露出補正の変化は適切か
・自動絞りレバーの動きが緩慢ではないか
・A⇔Sモード時のファインダー内指標の切り替えはスムーズか
この個体は致命的な電子基盤の故障もなく以下のメンテを行った。
・モルト貼り替え
・エアーダンパー清掃
・自動絞りレバー奥のギヤへ注油
また定かではありませんが電子部品の故障率は後期型で多少はマシになっているとも言われています(後期型はシャッターダイヤルの1/125秒がグリーン着色)
XDのムダのないフォルムの中で特に美しさを感じるのが、ペンタ部の絶妙な角度と高さ。個人的には一眼レフのペンタ部に強いこだわりはないが、このXDには特別に惹き付けられるものがあった。
それを引き立てる精悍なネオブラックは、当時協業関係であったライカの技術を取り入れたアルマイト処理が施されている。サラリとした心地良い手触りは耐久性にも優れる高品位なものだ。
この塗装処理にはコストが掛かりシルバーボディよりも6,000円高い値段だった。以降のXシリーズはプラスチック外装が主流となり上下金属カバーのメタルボディはXDが最後となった。
ちなみにレンジファインダーのミノルタCLEもこれと同じネオブラック塗装とのことです。
XDのスペックに現れない長所は、巻き上げからレリーズまでの秀逸なシャッターフィーリング。
特に巻き上げレバーの滑らかさは絶品。分割巻き上げこそ出来ないが、ヌルッとワンストロークで巻き上げる感触が至高。
電源スイッチはなく通電はシャッター半押しで作動。
シャッター最高速度が1/1000秒なのはXシリーズ全体の弱点と言える(フラッグシップ機のX-1のみが1/2000秒)
ダイヤルのBと〇(1/100秒)は電源不要の機械式シャッターで作動。その際はシャッターストロークが少し深くなる。
シャッター音は『シュコン』と歯切れの良い音で、“シュ”の瞬間に空気が圧縮されたようにも聞える。これがエアーダンパーの効果なのか。
ちなみにレリーズボタンを装着すると見た目以上にホールド性が向上するのでオススメ。
XDの電子技術で最も高度なのが『超自動露出』ことサイバネーションシステム。
「シャッター優先AE時に絞り連動範囲内で適正露出が得られない場合、自動的にシャッター速度を適正調整する」言わば安全機能でありプログラムAEの前身のようなものだ。
それを高精度に作動させる《瞬間絞り込み測光》も採用され測光システムは念入りな設計となっている。
超自動露出への設定はMDレンズ使用時に3か所のグリーン着色された文字を揃えることで完了する。これは標準レンズ時の基本ポジションであり、焦点距離や被写体に応じて高速、低速側寄りなどある程度のカスタムが可能。
実際この機能が広く周知されていたかと言うと微妙な所であり、ミノルタ自身も利点をアピールしきれなかった印象で初心者には理解し辛く、経験者には特に不要であったのが実状だろう。
ミラーボックス内の劣化したモルトはスクリーン内にも混入していたので清掃交換済み。
しかしこの作業でマウントの部品まで外さなくてはならないのは少々神経を使う。分解ついでにマウント側面にあるエアーダンパーの清掃も実施。ここのエアーダンパーが汚れているとシャッターラグや速度不調の原因となることが多いようだ。
この個体のダンパーは元々キレイだったが清掃後はシャッター音が気持ち軽くなった印象。
ペンタ部下の小さな四角はレンズの絞りリング指標をファインダー内に投影するための小窓。
シンプルなフィルム室。モルトの貼り替えは割と簡単な部類でした。
ファインダー横にはアイピースシャッターのレバー付き。
視度調整付きのXD-sはこのレバーの部分が視度調整ダイヤルに置き換わっている。
ボディ底部もシンプル。巻き戻しスイッチは多重露出機能も兼ねている。
電池は1.5VのLR44などを2個使用。
電気系に不調を起こした個体は電池の消耗が異常に早くなる場合もあるようだ。
最高の見え心地であるアキュートマットスクリーンをフル堪能するには自分に合った視度調整は必須。
しかしミノルタXシリーズ用の「視度調整アタッチメントVn」は入手困難のレア物。
他メーカ製をいくつか試していた所、現行販売されているニコンの「DK-20C」が最もフィットした。
しかしストッパーが効かず不意に抜ける心配があるので下部をテープで止めておくと安心出来る。
当初はレンズ目当てで入手したセットだが、思いのほかボディの方に惚れ込んでしまった。
とは言えMDレンズで代表的な広角単焦点の「MD W.ROKKOR 35mm F1.8」も非常に魅力的。大口径ながら小型軽量でXDとベストマッチだ。
まとめ
当時は両優先AEなどで注目されたXDだが、現在は高品位な塗装仕上げのメタルボディと抜群に明るいファインダー、秀逸なシャッターフィーリングなどスペック表に現れない道具としてのグレードの高さが光る。
状態の良い個体に出会えれば間違いなく幸せになれますが、電子シャッター機の定めである電気系のトラブルが多めで修理業者でもお手上げの場合も少なくない。
やはりミノルタMDボディのオススメは生産時期が長く流通数も多い「X-700」でしょうね。プラ外装で少しチープですが目立った持病もなく、倍率0.9倍+アキュートマットスクリーンのファインダーはMF一眼レフで最上位クラスの見え心地と高評判。
私のXDも外観はキレイでもいつ壊れてもおかしくはないなと言う感覚はありますね。しかし予備機を確保しておきたくなる位の魅力はありますね。
以上【MINOLTA XD】のレビューでした。
【フィルム作例】MINOLTA XD / MD W.ROKKOR 35mm F1.8
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